翔んでアルミナリア

「付け加えますれば、その蓮の実からは生命反応が感じられます。持ち帰って池に植えれば、おそらく芽吹き花を咲かせるかと存じます」
沈黙を埋めるように、エストライヘル師が言葉を続ける。

そういえば教科書で読んだ覚えがある。弥生時代の遺跡から発掘された蓮の実が花を咲かせた話。
この蓮の実はどれだけの年月をここで…

「皆の者」

リュシウス帝の声は、それまで聞いたことがないほど低く峻厳だった。
「招かれざる客だ」

視線はすでに来た方向に向けられている。燐光石の明かりをはじいて、リュシウス帝の双眸(そうぼう)が金色に光った。
次いですばやく伏せ、片耳を地に押し当てる。

「六人…七人、ほどの足音だ。こちらに正確に近づいてくる。リラン一味とみて、間違いなかろう」
それだけ言って立ち上がる。
端正な横顔と赤い髪が砂で汚れているが、気にかかるそぶりもない。

「いかな策を弄して我々を尾けてきたのか」
エストライヘル師が自問するようにつぶやく。

『そんなバカな』みたいな芸のない台詞を口走ったりしないのが、地味にすごいと思ってしまう。
事実を認識した上で思索を巡らす。皇帝といいエストライヘル師といい、言動に無駄がないのだ。