翔んでアルミナリア



あれだ、とオンテ・ションが(もちろんザンテ語だけど)指し示したのは、一見なんの変哲もないような岩だった。

言われてみれば確かに、人差し指を立てた巨大な握りこぶしのように見えなくもない。丸い形の岩の上に、細長い岩が伸びている。
珍しく派手派手しい岩が目白押しの奇岩地帯では、見過ごしてしまうさりげなさだ。
この一帯を知悉(ちしつ)したザンテ族の道案内がなければ、とうてい見つけられないだろう。

これが? と一瞬思ったけど、考えてみれば何かを隠すのなら目立たないほうがいいに決まっている。

さてこの岩のどこに隠してあるんだろう。周りを掘るのかな? と眼前にそびえる岩を馬上から見上げてたたずむ。

もの問いたげな視線が、エレオノア姫に集まった。

「このまま日没を待たねばなりません」
エレオノア姫は、きっぱりとした口調で告げた。