翔んでアルミナリア

「相手はクルシュタルです。警戒は怠らぬにこしたことはございませぬ」

エストライヘル師がそう言うからには、冥の研究に傾倒してしまったというクルシュタルなる導師も同格の力を持っているのだろう。老獪な導師と皇帝の弟。厄介な組み合わせだ。

「意外と鳥が飛んでるね」
隣をゆく蓮くんに話しかける。

「乾燥地帯に適応した植生がそれなりにあるから。植物があれば、虫がいて、それを餌にする鳥も生きていけるってことだな」
したり顔で口にする。

「虫、苦手だから、あんまり見かけないのは嬉しいけど」

「トンボがいたな。この世界の固有種みたいで、名前は分かんなかったけど」

「トンボくらいなら我慢するよ」

ハエや蚊にたかられる、サソリに襲われる、といった目に遭わずにすんだことを、ひそかに感謝した。

「知ってる? トンボの飛行能力は、昆虫界でも随一なんだ。驚くべきことにその形態は、古生代からほとんど変わってない。ゴキブリと並んで人類よりはるかに長い歴史をもつ、生きた化石といえる存在だな」

すごいのかもしれないけど、ゴキブリの名前を出すのはやめてほしい。