翔んでアルミナリア

随員に手綱を託すと、そのままひとりザンテ族の男性に歩み寄ってゆく。

リュシウス帝は腕の動きだけで、隊に待機を命じた。
エレオノア姫は足を進めながら、目元以外を覆い隠していた頭巾をするりと自然なしぐさで外した。
後で知ったことだけど、常に頭巾で日差しから保護している頭部をさらすのは、相手への最上級の敬意をあらわす行為ということだった。

応えるように、男性がはじめて動いた。エレオノア姫のほうに近づいてくる。

エレオノア姫が歩きながらなにごとか呼びかけた。ザンテ語なのか、耳慣れない音の連なりで何も聞き取れない。
だが効果はてきめんだった。
ザンテの男性の顔に、まぎれもない笑みが広がる。

姫様、すごいです! 心の中で快哉を叫んだ。

二人が言葉を交わしはじめる。談笑しているといってもいい雰囲気だ。
やああって、エレオノア姫がこちらを振り向くと、大きく手招きする。
話がまとまったみたいだ。

合流すると、姫様が陛下に伝える。
「陛下、この方の名はオンテ・ション。ザンテの言葉で “幸運の雲” という意味です。属するコロニーが近くに滞留しているそうです。わたしたちを歓迎すると。長老に引き合わせたのち、“ひとつ指の岩” まで案内してくれると言っています」

ひとつ指の岩? そこが宝の隠し場所なんだろうか。
ともあれ大きな進展に、隊はにわかに活気づく。立役者はまぎれもなく、エレオノア姫だ。