「束縛しても?」
「束縛したくなるほど香菜を不安にさせないから」
「っ……」
「俺が離れたことあった?」
私は首を左右に振る。
翔は本当に私のことを理解している。何を言おうと何をしようと今まで翔だけは私を見捨てなかった。
引っ込んだ涙が再び溢れ出てくる。
「翔……ありがと……」
「おう」
翔の手が私の頭に載り、優しく撫でる。
「じゃあ、今日から幼馴染は卒業っつーことで」
立ち上がった翔は部屋の引き出しを手当たり次第に開けていく。
「何探してるの?」
「この部屋の合鍵」
「え?」
「香菜の合鍵は俺が持つから」
「そうなの?」
「別に勝手に入ってきたりはしないよ。恋人の合鍵を持ちたい気持ちは香菜なら分かるでしょ」
そう言われて不覚にも顔が赤くなる。
そっか……私翔の恋人になったんだ……。
今度は私が立ち上がってテレビの前に行き、引き出しからこの部屋の合鍵を取り出した。
「はい……どうぞ」
翔に鍵を差し出した。私より大きな手が鍵を受け取るまでのわずかな時間がなぜか緊張した。
「どうも」
翔はその鍵を大事そうにカバンに入れた。
丹羽くんと付き合って別れた記念日に翔と恋人になった。
足の力が抜けて床に座り込んだ。
再び私の前に座った翔は「取りあえずキスでもしとく?」と言った。
「なっ、いやっ……あの……」
翔が真面目な顔で言うから一気に顔が火照る。
「嫌か?」
「嫌じゃないんだけど……」
だってさっきまでただの幼馴染だったのに、いきなりキスなんて慌てるに決まっている。
戸惑う私に翔は笑って「焦んなくていいよ」と優しく言う。
「俺を好きになるよう焦らせるつもりはない。今更待てないなんてことないから」



