センジュの前に広がる光景。

それは至って普通の洋室だった。

魔界と言ってもおどろおどろしい訳ではないらしい。

雰囲気は欧風の城の中という感じだ。広い部屋に大きな窓、それに艶のあるネイビーのカーテンが風に揺れている。


「気に入った?割と人間の趣味と同じだし素敵だろう?」

センジュはぶんぶん。と首を横に振る。


「えー?何故だい?」


「な、なんでこんな場所に連れてきたんですか!?」


焦りつつもセンジュは理解できない出来事を知ろうとした。


「さっき自分で言ってたじゃないか。ママに連れていってって」


「言ってたけど・・それとどう関係が」


「これからはパパが保護者になるんだからさ」


「ほ、保護者・・?」


_頭から角が生えた人が!?


「それに今後、センジュはあそこで一人で生きて行く気だったの?」


「それは・・まあ・・その・・何も考えてはなかったけど・・でもっ」



_あの時はママの事しか考えてなかったし・・パパが現れるなんて思いもしなかったし・・死んでしまいたいくらいだったし。




「唯一の親子なんだからさ、仲良くして行こう?ね?」



_ね・・って言われても・・全然現実見が無さすぎるし。まだ自分の父親って感じしないし。


戸惑いを隠せないセンジュに、父は子を可愛がる親の様に頭を撫でながらもため息を漏らした。スムーズにいかなくて困っている様子だ。
優しい顔をして意外とせっかちかもしれない。とセンジュもまだ気が抜けない。


「そうそう、センジュには知っていて欲しいことがある」


「・・なんですか」