魔界の華は夜に咲く

「変な顔してるぞ」

「へ!?変!?嘘!?」

急激に恥ずかしさがこみ上げてきた。自分の顔を見られたくない。
泣き腫らして相当不細工になっているだろうと思った。
人に指摘されると余計にショックだ。


「うう・・こっち見ないで」

「興味ない。安心しろ」


ズガンッ!!と大砲を打たれたような気分だ。
何度もわかってはいるがストレートに言われるとショックが倍増だ。
この短期間で5回くらいショックを受けている。


_さっきからずっと酷い言葉浴びせられてる。でも言い返せない。ていうか、なんでこんなに傷ついてるんだろう・・フォルノスとの言い合いなんていつもの事なのに。


「お前・・」

ドキッ
落ち込みうつ向いたままのセンジュをフォルノスはワザと覗き込んできた。


「な、何?なんですか」

「いや、いつもなら言い返してくると思ったが・・珍しいな」

「え・・」


ワザと喧嘩を吹っ掛けてきていたらしい。
それにすら対応できない自分を責めた。
自分の自信のゲージがゼロに近かった。
元々自己評価低めな性格だ。
更に泣き腫らしたので、落ちるところまで気分が落ちていた。


「なんでもない。こっち見ないで」


やけくそでフォルノスから離れる手段を取った。


_調子狂うな。なんだか。


2人とも同じ事を思っていた。
センジュは更に不貞腐れた。
口をとがらせてそっぽを向いている。


「口が尖っているぞ」

「ワザと尖らせてるの」


可愛げのない態度に首を傾げつつ、フォルノスは立ち上がった。
今はふざけあっている場合ではない。
肉体も大分回復し動ける様になった。


「そろそろ出るぞ」

「・・うん」


やれやれと呆れながらため息を吐きつつ、フォルノスは自分の体の火傷を治し始めた。
治癒の力だ。
センジュはそれを見て思った。


_私の力じゃ・・フォルノスの傷は治せない。力は持ってるのに天使にしか使えないなんて。


ウリエルの傷を治した時を思い出し、もの悲しくなった。
ため息が駄々洩れのセンジュに、フォルノスは機嫌を損ねた。

「さっきから辛気臭い」

「ごめん・・」

「ここを出たら天使と遭遇する。覚悟を決めろ」


見上げるとフォルノスの顔はしかめっ面だった。
自分に嫌気を差しているのだろうと思った。


「ごめんね・・」

「何故そうお前は簡単に謝る」

「・・ごめんて思うから謝るんだよ」


_こんな私でごめんなさい。皆の役に立ちたいのに。


俯き、そう心の中で謝った瞬間フォルノスの右手が上がった。


_え?もしかして叩かれる?


覚悟して目をつむった。
しかしその手はセンジュの頭を包んだ。