「フォルノスは・・私のコト、嫌いかもしれないけど・・」

「ああ」

ぐさり。と氷柱の様な答えが返ってきた。

「そこは嘘でもそんなことないって言ってよ!今ココロ傷つきやすいんだからっ」

「そうやって、俺の心に簡単に入ってくるところが嫌いだ」

「へ・・?」

「もし俺がお前に執心したら・・一番面倒だ」

と目をおもむろに背けた。


_すでにこいつは俺をおかしくさせている。一度は殺そうとまでした女を助け・・今は失いたくないと思ってしまった。あってはならない感情が次から次へと・・。


出会った時からフォルノスは決めていた。センジュを道具として捉えなければ足元をすくわれかねないと。
自分の嫌いなものは自分が弱くなるという事だ。


「お前は魔界の者が好きだと言ったな・・それは_」


ドキン
振り向き様にまっすぐに見つめられ、センジュの心臓が跳ねる。
フォルノスの瞳はダイヤモンドの様に美しい銀だ。
何か言いたげなフォルノスだったが、躊躇すると口をつぐんだ。


「どうしたの?何?」

「なんでもない」

「え?気になる・・」

「忘れろ」


_こんな話をしている場合ではない。愚かの極みだ。今は天使共をどうするかだけを考えるべきだ。



「えっと・・ありがとね。フォルノス」


他人に礼を言われ慣れていないフォルノスだ。
怪訝そうに眉をしかめた。

「何を企んでる」

「え?ただ、お礼が言いたかっただけなんだけど」

「何故だ」

「だって・・助けてくれたから」

「別に助けたわけじゃない」

「え!?違うの!?追ってきてくれたからてっきり・・」


センジュは真面目に落ち込んだ。てっきり自分を助けに来てくれたのかと思っていた。


「ウリエルを倒しに来ただけだ」

「そ、そっか・・そうだよね・・ハハ」


無理やりから笑いしてごまかした。


_そうだよね。私のこと殺そうとまでした人が助けにくるわけないか。私のコト嫌いなのに。


「ついでにお前はあの方の娘だからな。取り返すのは当然だ」

「ついでって」


_うわ。やっぱり私は物扱いなんだ。セヴィオがこの前言ってたコトは勘違いだったんだよ。この人が私に本気とかあり得ないよ。それについでって・・普通にショックなんですけど。


自分の気持ちが理解不能だった。
何故かモヤモヤする。胸がやけにズキズキと痛む。
ずーーーーん。
と暗い陰を落としながらセンジュは俯いた。


「どうした?」

「え、あ、ううん・・なんでもない」


_なんだろう。なんでこんなに残念なんだろ。


フォルノスの顔を見ると息が出来なくなる。
心臓が鷲掴みされた様になった。


_え?私・・なんか変?