フォルノスは人間界の別の場所へ逃げ延びた。
息も絶え絶えセンジュを抱えながら歩く。
「フォルノス・・体平気なの?」
心配そうに見つめるセンジュにフォルノスは皮肉を言った。
「俺の事よりも、自分の事を心配したらどうだ」
「え?」
「ウリエルが言っていた事が真実なら、今後お前の出かた次第では魔族にとって脅威となるだろう」
「やっぱり・・そうなのかな」
それについては何も言い返せなかった。
本当なら自分も現実逃避したい状況だ。
「私・・皆の敵になっちゃうのかな・・」
_天使って知られたら・・きっと皆・・私を見る目が変わるよね。今まで通りにいかないよね。
フォルノスを掴む手は強く、しかし震えていた。それに気づきフォルノスは言い直した。
「だが、あの方の血も引いている。まだどうなるかわからない」
「フォルノス?」
突然の前向きな発言に驚いた。励まされたと感じた。
「あの方は本当にお前を愛している。それは、俺たちにも伝わっている・・あの目は嘘だとは思えない」
それを聞き、再度涙が溢れて来た。
「私もパパの優しい目は好きだよ」
「あの方に会ってみないことにはわからないが・・何を言われても強く心を持っておけ」
「・・うん・・ありがとう」
今は父親を信じるしか道はない。
そう思った。
「く・・」
突如フォルノスの力に限界が来た。
がくりと膝をつく。
「フォルノス!」
「・・・」
「だ、大丈夫?」
「しばらく・・休めば良くなる」
「あ、あそこに座ろう?」
近くに空き家らしき家を見つけた。
その家には人の気配はない。その大きな家の庭に立派な木が立っていたのでその陰に隠れる事にした。
別荘が立ち並ぶ場所なのだろう。
辺りから鳥のさえずりが聞こえる。
「天使、追ってこないかな・・」
「魔界への道と逆の方向に来た。あいつらは恐らく向こうへ行くだろう。・・そこで交戦するだろうな」
「そう・・なんだ」
センジュとフォルノスが魔界へ戻るなら天使たちは必ずその道を警戒しているだろう。
魔界へ繋がる階段は包囲されている可能性が高い。
「皆はどうしてるんだろう・・」
「あの後エレヴォスは俺の代わりにベリオルロス様の元へと向かった。アルヴァンは魔界の入り口を護っている。・・セヴィオは瀕死だ」
「セヴィオが!?」
「お前の元へ向かう途中に担がれているセヴィオを見たからな」
「そんな・・」
「誰もが大天使が直に城に潜入するとは思わなかった。あの方の呪いが発動したタイミングでお前を攫っていく算段だったのだろうな。セヴィオの事は不運と思え」
「酷すぎる・・パパとセヴィオを苦しめてまで・・」
「酷いと思うなら、あいつについて行こうなどとは思わない事だ」
「っ・・ごめん・・ママにどうしても会いたくなって」
「まあ、その話を聞いたらそう流れるだろう」
いかに大天使と言えど魔界の城へ単独で潜入するなど容易な事ではない。
決死の覚悟でセンジュを探しに来たのだとフォルノスは確信した。
_ウリエルも本腰を入れてきたと見える。まず間違いなく今回をきっかけに争いが始まるだろうな。おそらくあの方の聖痕発動を皮切りに天使共が動き始まった。17年前の戦争の続きを始めるつもりだろう。
四大魔将の一人一人が考え行動している。
一番先に何を護るべきか。そしてそれぞれの背中を護る為に。
「パパは?」
「あの方は執務中に突然倒れた。意識はあるが苦しそうにしていた。天使による呪いを受けている。それによって体が蝕まれている」
「パパがママを殺したってあの人が・・ウリエルが言ってた。それと何か関係してるのかな」
「あの方が・・?」
「うん・・ママを・・」
今もそんな話信じたくはない。
だが、聞いてしまったものは取り消せない。
「それは・・あの方に聞かねばわかるまい」
「うん・・」
「お前はその話を聞いてあの方を憎くはならなかったのか?」
「そんな・・今はまだ信じられない気持ちが強くて・・信じたくなくて」
「そうか」
「例えそれが真実だったとしても・・私・・魔界の皆の事が好き」
センジュは溢れる涙を取り消す様に強く拭った。
フォルノスはただセンジュを見つめたまま話を聞いている。
「・・皆・・優しくて・・私がパパの娘だったからだとしても・・」
「・・・」
「私が天使の血を継いでたって・・皆の事を嫌いになったりしない・・私は」
そう告げた瞬間に涙がとめどなく溢れた。
魔界での日々を忘れる事など出来ない。
母を失い、絶望感から救ってくれた父や魔界の皆を。
心から消す事は出来ない。
息も絶え絶えセンジュを抱えながら歩く。
「フォルノス・・体平気なの?」
心配そうに見つめるセンジュにフォルノスは皮肉を言った。
「俺の事よりも、自分の事を心配したらどうだ」
「え?」
「ウリエルが言っていた事が真実なら、今後お前の出かた次第では魔族にとって脅威となるだろう」
「やっぱり・・そうなのかな」
それについては何も言い返せなかった。
本当なら自分も現実逃避したい状況だ。
「私・・皆の敵になっちゃうのかな・・」
_天使って知られたら・・きっと皆・・私を見る目が変わるよね。今まで通りにいかないよね。
フォルノスを掴む手は強く、しかし震えていた。それに気づきフォルノスは言い直した。
「だが、あの方の血も引いている。まだどうなるかわからない」
「フォルノス?」
突然の前向きな発言に驚いた。励まされたと感じた。
「あの方は本当にお前を愛している。それは、俺たちにも伝わっている・・あの目は嘘だとは思えない」
それを聞き、再度涙が溢れて来た。
「私もパパの優しい目は好きだよ」
「あの方に会ってみないことにはわからないが・・何を言われても強く心を持っておけ」
「・・うん・・ありがとう」
今は父親を信じるしか道はない。
そう思った。
「く・・」
突如フォルノスの力に限界が来た。
がくりと膝をつく。
「フォルノス!」
「・・・」
「だ、大丈夫?」
「しばらく・・休めば良くなる」
「あ、あそこに座ろう?」
近くに空き家らしき家を見つけた。
その家には人の気配はない。その大きな家の庭に立派な木が立っていたのでその陰に隠れる事にした。
別荘が立ち並ぶ場所なのだろう。
辺りから鳥のさえずりが聞こえる。
「天使、追ってこないかな・・」
「魔界への道と逆の方向に来た。あいつらは恐らく向こうへ行くだろう。・・そこで交戦するだろうな」
「そう・・なんだ」
センジュとフォルノスが魔界へ戻るなら天使たちは必ずその道を警戒しているだろう。
魔界へ繋がる階段は包囲されている可能性が高い。
「皆はどうしてるんだろう・・」
「あの後エレヴォスは俺の代わりにベリオルロス様の元へと向かった。アルヴァンは魔界の入り口を護っている。・・セヴィオは瀕死だ」
「セヴィオが!?」
「お前の元へ向かう途中に担がれているセヴィオを見たからな」
「そんな・・」
「誰もが大天使が直に城に潜入するとは思わなかった。あの方の呪いが発動したタイミングでお前を攫っていく算段だったのだろうな。セヴィオの事は不運と思え」
「酷すぎる・・パパとセヴィオを苦しめてまで・・」
「酷いと思うなら、あいつについて行こうなどとは思わない事だ」
「っ・・ごめん・・ママにどうしても会いたくなって」
「まあ、その話を聞いたらそう流れるだろう」
いかに大天使と言えど魔界の城へ単独で潜入するなど容易な事ではない。
決死の覚悟でセンジュを探しに来たのだとフォルノスは確信した。
_ウリエルも本腰を入れてきたと見える。まず間違いなく今回をきっかけに争いが始まるだろうな。おそらくあの方の聖痕発動を皮切りに天使共が動き始まった。17年前の戦争の続きを始めるつもりだろう。
四大魔将の一人一人が考え行動している。
一番先に何を護るべきか。そしてそれぞれの背中を護る為に。
「パパは?」
「あの方は執務中に突然倒れた。意識はあるが苦しそうにしていた。天使による呪いを受けている。それによって体が蝕まれている」
「パパがママを殺したってあの人が・・ウリエルが言ってた。それと何か関係してるのかな」
「あの方が・・?」
「うん・・ママを・・」
今もそんな話信じたくはない。
だが、聞いてしまったものは取り消せない。
「それは・・あの方に聞かねばわかるまい」
「うん・・」
「お前はその話を聞いてあの方を憎くはならなかったのか?」
「そんな・・今はまだ信じられない気持ちが強くて・・信じたくなくて」
「そうか」
「例えそれが真実だったとしても・・私・・魔界の皆の事が好き」
センジュは溢れる涙を取り消す様に強く拭った。
フォルノスはただセンジュを見つめたまま話を聞いている。
「・・皆・・優しくて・・私がパパの娘だったからだとしても・・」
「・・・」
「私が天使の血を継いでたって・・皆の事を嫌いになったりしない・・私は」
そう告げた瞬間に涙がとめどなく溢れた。
魔界での日々を忘れる事など出来ない。
母を失い、絶望感から救ってくれた父や魔界の皆を。
心から消す事は出来ない。


