2人が小屋から出た瞬間だった。

ドドドッ!!
という激しい音と共に、ウリエルに氷柱が再度降り注いだ。


「フォルノス!!?」


手足に氷柱が刺さり、ウリエルは勢いよく壁にはりつけられた。

「冷静沈着と謳われた男が・・これほどしつこく嗅ぎまわるとはな・・」


狂乱に満ちた瞳で、フォルノスはゆらりと近づいた。


「許さない・・あの方を苦しめる者は・・」

フォルノスも深手を負っている。全身にやけどを負い、それでもなお追ってきたのだった。

「フォルノス!」

センジュは今にも倒れそうなフォルノスを支えた。


_助けたい・・助けたいのに出来ない。私の力はママと同じだった。天使の力だった。


フォルノスはセンジュを無視し、ウリエルの方へと向かった。


「止めてフォルノス!駄目」

「殺す・・あの方を苦しめる者は・・全員殺す」

「フォルノス!!ねえ!!」


センジュはフォルノスの正面から抱きしめた。


「駄目・・お願いだから止まってっ」

「・・お前・・か」


センジュの温もりでゆっくりと正気に戻ったフォルノスは、ウリエルにとどめを刺そうと手に力を込めた。


「フォルノス!?」

「目を閉じろ」


放とうとした寸前で、ウリエルはセンジュに向かって叫んだ。


「センジュ!!お前は天使だ!天界の人間だ!アンジュの為にも一緒に行こう!!」


その言葉に動けなくなったのはフォルノスだった。
もちろんウリエルの策だ。


「なん・・だと」


信じられないと言わんばかりにフォルノスはセンジュを凝視した。
目を限界まで開いたまま固まっている。言葉が出てこない様だ。


「ママは・・天使だったって・・あの人が」


ぼろぼろ涙を零しながらセンジュは呟いた。


「・・知られたら私、パパにどうされるの?」


絶望感に打ちひしがれ、センジュはフォルノスを抱きしめた。

「・・城へ帰るぞ」

「え?」

「判断はあの方しか出来ない。が、その前にこいつにトドメを刺す」


フォルノスはセンジュの肩を抱き手を翳した瞬間に、空に翼が羽ばたく音が聞こえた。


「見つけた!いたぞ!」

「ウリエル様!!」

「ご無事ですか!?」


天使達がウリエルの気配を辿って現れた。
1人ではない。複数人居る。
形勢逆転だった。
フォルノスは大火傷という痛手を負っている。


「フォルノス!」

「ちっ!」


ドォオオオオンッ
ウリエルにトドメを刺す余裕がなくなったフォルノスはセンジュを抱きかかえ、その場を爆発させ逃げおおせた。


「センジュ!!!」


ウリエルの声は届かなかった。
仲間に助け出されたウリエルは喪失感に囚われていた。

「このままではセンジュも魔王に・・」