その後2人は手を握り天井を見つめながら他愛ない話に花を咲かせ、穏やかな時間を過ごしていた。
センジュは話の合間にいつの間にか眠りについてしまっていた。
_俺の隣でぐっすりとか、マジで気抜き過ぎだろあんた・・ホント魔性の女。
微笑しながらも少し切なくなった。
顔を見るたびに好きだという感情が湧き上がる。
と、その時だった。
「・・あ?・・・誰かいるのか?」
廊下に気配を感じセヴィオはドアに向かった。
_リアだったら飲み物を用意しておいてもらおうかな。
「リア?悪いけどさ_」
ズッ・・
「!!!」
ドアが開いた瞬間に突然口を押えられ、腹にナイフを突き立てられた。
_誰・・だ・・?
深くフードを被っているので顔は見えない。
力が抜け、セヴィオはそのまま崩れ落ちた。
_まずい・・センジュが・・。
セヴィオは振り絞って声を上げた。
「く・・せ者だ!誰かっ!センジュを!!誰かーーーっっ!!!」
「セ、セヴィオ様っ!?」
「こ、これは!!セヴィオ様っ」
「城中に急ぎ知らせよ!!」
「ハハッ」
バタバタと兵士達が駆けまわる音が聞こえる。
_頼む・・誰か・・セン・・ジュ。
そのままセヴィオは意識を失った。腹部からドクドクと鮮血が床へと伝う。
同時刻、セヴィオの叫び声でセンジュは目が覚めた。
「何!?セヴィオ!?はっ・・」
センジュは気づいたときにはフードを被った見知らぬ男の肩に担がれていた。
「だ、誰!?きゃあっ」
男はバルコニーから木へと飛んだ。
下では兵士達がざわめいている。
「あれは姫様!?」
「放て!」
「待て!姫様に当たるぞ!」
下の階いた城の兵士達は男目掛けて矢を放とうとしたが躊躇している。
男はそれを横目に裏門の方へと飛んだ。
男が向かった先は一つ。
人間界や天界へ繋がる階段だった。
「は・・離して!嫌だ!!誰かっ」
「・・・」
男は無言で階段へ向かう。
_この人、階段へ向かってる!もしかして天使!?
「誰か来て!皆!パパーーー!!」
城の兵士達が遠くに見える。追いかけてきているが男の足の方が速い。
センジュが叫んだと同時に羽音が聞こえた。
バサッ
階段を少し登ったところで男の背中から翼が広がった。
「あ・・」
わかりやすいほどに美しい純白の羽根が目に飛び込んできた。
「天・・使」
「ああ、俺自ら来た」
なびく風がフードを取ると、透き通るような金の髪が揺らめいた。
人間なら誰もが見惚れるであろうその容姿。
センジュはその姿に固まった。
見惚れたのではない。
恐怖で固まったのだった。
「なんで・・どうして・・?」
「まあ、何も知らないのだから当然な反応だな」
サファイアの様な青い瞳がセンジュを見つめた。
そして一人で城に潜入出来るほどの手練れだ。センジュの勘が働いた。
「大天使・・?」
「もう俺を知っているのか」
ドクン
_どうしよう。利用される!パパを・・皆を危険な目に合わせちゃう!!
「離してください!」
バタバタと男の肩でもがいた。
「静かにしろ。お前は_」
「嫌だ!絶対に嫌!」
「こんなんじゃ冷静に話も出来ないな」
「話す事なんてない!どうせ私を利用する気なんでしょ!?」
「流石魔王だな。洗脳もしっかりしてる」
「何!?」
合間にシュッと
男目掛けて威嚇の矢が何本も飛んでくるが、男は手で風を起こし簡単に矢を吹き飛ばした。
「知りたくないのか?お前の母親の事を」
「え・・?」
「俺は17年間お前達を見守ってきた」
「ママと私を?」
「そうだ。アンジュに逢わせてやる。そこで話すといい」
_ママに会える!?この人について行けば・・?
ピタリと止んだ抵抗に、男は満足そうに頷いた。
「よし、では行こう」
「センジュ!!」
「駄目ですよ!!」
男が一歩階段を登った瞬間、左右からエレヴォスとアルヴァンが男に斬りかかった。
男は2人の刃をひらりと交わし、上段に飛びあがった。
_エレヴォスさん!アルヴァンさん!!
「おおっと、危なかった。もう少しずれていたらこの子に当たっていたぞ」
「貴様ウリエル!!」
「お前が何故ここに!?」
恨めしそうに2人は大天使ウリエルを睨んでいる。
「強行突破というヤツだ。先日送った者が戻ってこなかったし、恐らく失敗したと思ってね」
_先日パパに殺されちゃった人の事!?
それについてはエレヴォスが一番怒っている。
「よくも私に化けさせましたね・・絶対に許しません!!」
「ま、こっちも命がけだし。手段は何でも良かったんだ」
スラリと抜いた剣を2人に向かって突きつける。
「さて、引いてもらおうか。出なければここら辺一帯が火の海と化す」
構えていた剣が炎に包まれた。その熱さにセンジュの額から汗が滲む。
ゆっくりとウリエルは階段を上がる。確実に一歩ずつ。
「ところで魔王は駆けつけない様だが、大事な1人娘を放って何をしている?」
ドクン
ウリエルの言葉に、アルヴァンは歯ぎしりした。
今にも怒り狂って襲い掛かりそうだ。
「貴様・・よくもあの方を・・許せん・・」
余裕そうにウリエルは辺りを見回す。
「四大魔将も1人居ない様だな」
それにはセンジュも不思議に思った。
あのフォルノスが駆けつけない。夜中でもしっかりと自分を見張ってくれていたフォルノスがだ。
不安が不安を増幅させる。
_フォルノスに何かあったの!?
「17年前に魔王に何をした!!」
「さあ?記憶にないな」
「とぼけるな!!」
魔王は今は床に臥せっている。
執務中に倒れ、現在はフォルノスが治癒の力を使って回復させている最中だった。
センジュはそれを知る由もないが2人には共有されている。
故に怒りが半端ではない。
「俺はこの子に用があるだけだ。酷い事はしないと約束しよう」
「信用出来るか!卑怯者!」
アルヴァンがそう言うと、流石にウリエルも怒りをあらわにした。
「卑怯?卑怯を生業としてきたお前達に俺が卑怯呼ばわりされる筋合いはないな」
その怒りは肩に乗るセンジュにもビリビリと伝わってきた。
怒りの声が体中に響いているのだ。
「卑怯で言うならば・・この子の母親を殺した魔王こそ・・真の卑怯者ではないか?」
ズキン
ウリエルの言葉がセンジュの全身に響いた。
_今・・なんて?
「魔王様に呪いをかけ、苦しめる者がそれを言うか!!」
アルヴァンの言葉もしっかりとセンジュに突き刺さる。
_どういう事・・?私の知らないところで・・一体何が起きてるの?
衝撃と不安の波がセンジュを襲った。
母の顔も父の顔も何度も脳裏に浮かびあがる。
「一体何が・・」
「それは天界で話す。行くぞ」
ウリエルは静かにそう告げると大きく翼を羽ばたかせ、一気に飛ぼうとした。
その瞬間だった。
ドシュッ!!!
ウリエルの脇腹に氷柱が刺さった。
「っ・・」
_これは・・フォルノスの!!
「許さん・・ウリエル!!」
目も止まらぬ速さでフォルノスの氷柱がウリエルの身体に突き刺さる。
天馬から飛び、ウリエルの近くに降り立った。
「うぬ・・流石だな・・」
しかしウリエルはそのまま飛び上がった。
「フォル・・!!」
「燃えぃ!!」
ウリエルはフォルノス目掛けて剣に纏った炎を放った。
「あああっ!!フォルノス!!いやああっ!!」
センジュの目の前でフォルノスが火だるまになった。
「ぐぅ・・センジュっ!待っていろ!!」
「こっちだ」
ウリエルは深手を負いながらもその隙を狙い、咄嗟に人間界の入り口へと飛び込んだ。
センジュは話の合間にいつの間にか眠りについてしまっていた。
_俺の隣でぐっすりとか、マジで気抜き過ぎだろあんた・・ホント魔性の女。
微笑しながらも少し切なくなった。
顔を見るたびに好きだという感情が湧き上がる。
と、その時だった。
「・・あ?・・・誰かいるのか?」
廊下に気配を感じセヴィオはドアに向かった。
_リアだったら飲み物を用意しておいてもらおうかな。
「リア?悪いけどさ_」
ズッ・・
「!!!」
ドアが開いた瞬間に突然口を押えられ、腹にナイフを突き立てられた。
_誰・・だ・・?
深くフードを被っているので顔は見えない。
力が抜け、セヴィオはそのまま崩れ落ちた。
_まずい・・センジュが・・。
セヴィオは振り絞って声を上げた。
「く・・せ者だ!誰かっ!センジュを!!誰かーーーっっ!!!」
「セ、セヴィオ様っ!?」
「こ、これは!!セヴィオ様っ」
「城中に急ぎ知らせよ!!」
「ハハッ」
バタバタと兵士達が駆けまわる音が聞こえる。
_頼む・・誰か・・セン・・ジュ。
そのままセヴィオは意識を失った。腹部からドクドクと鮮血が床へと伝う。
同時刻、セヴィオの叫び声でセンジュは目が覚めた。
「何!?セヴィオ!?はっ・・」
センジュは気づいたときにはフードを被った見知らぬ男の肩に担がれていた。
「だ、誰!?きゃあっ」
男はバルコニーから木へと飛んだ。
下では兵士達がざわめいている。
「あれは姫様!?」
「放て!」
「待て!姫様に当たるぞ!」
下の階いた城の兵士達は男目掛けて矢を放とうとしたが躊躇している。
男はそれを横目に裏門の方へと飛んだ。
男が向かった先は一つ。
人間界や天界へ繋がる階段だった。
「は・・離して!嫌だ!!誰かっ」
「・・・」
男は無言で階段へ向かう。
_この人、階段へ向かってる!もしかして天使!?
「誰か来て!皆!パパーーー!!」
城の兵士達が遠くに見える。追いかけてきているが男の足の方が速い。
センジュが叫んだと同時に羽音が聞こえた。
バサッ
階段を少し登ったところで男の背中から翼が広がった。
「あ・・」
わかりやすいほどに美しい純白の羽根が目に飛び込んできた。
「天・・使」
「ああ、俺自ら来た」
なびく風がフードを取ると、透き通るような金の髪が揺らめいた。
人間なら誰もが見惚れるであろうその容姿。
センジュはその姿に固まった。
見惚れたのではない。
恐怖で固まったのだった。
「なんで・・どうして・・?」
「まあ、何も知らないのだから当然な反応だな」
サファイアの様な青い瞳がセンジュを見つめた。
そして一人で城に潜入出来るほどの手練れだ。センジュの勘が働いた。
「大天使・・?」
「もう俺を知っているのか」
ドクン
_どうしよう。利用される!パパを・・皆を危険な目に合わせちゃう!!
「離してください!」
バタバタと男の肩でもがいた。
「静かにしろ。お前は_」
「嫌だ!絶対に嫌!」
「こんなんじゃ冷静に話も出来ないな」
「話す事なんてない!どうせ私を利用する気なんでしょ!?」
「流石魔王だな。洗脳もしっかりしてる」
「何!?」
合間にシュッと
男目掛けて威嚇の矢が何本も飛んでくるが、男は手で風を起こし簡単に矢を吹き飛ばした。
「知りたくないのか?お前の母親の事を」
「え・・?」
「俺は17年間お前達を見守ってきた」
「ママと私を?」
「そうだ。アンジュに逢わせてやる。そこで話すといい」
_ママに会える!?この人について行けば・・?
ピタリと止んだ抵抗に、男は満足そうに頷いた。
「よし、では行こう」
「センジュ!!」
「駄目ですよ!!」
男が一歩階段を登った瞬間、左右からエレヴォスとアルヴァンが男に斬りかかった。
男は2人の刃をひらりと交わし、上段に飛びあがった。
_エレヴォスさん!アルヴァンさん!!
「おおっと、危なかった。もう少しずれていたらこの子に当たっていたぞ」
「貴様ウリエル!!」
「お前が何故ここに!?」
恨めしそうに2人は大天使ウリエルを睨んでいる。
「強行突破というヤツだ。先日送った者が戻ってこなかったし、恐らく失敗したと思ってね」
_先日パパに殺されちゃった人の事!?
それについてはエレヴォスが一番怒っている。
「よくも私に化けさせましたね・・絶対に許しません!!」
「ま、こっちも命がけだし。手段は何でも良かったんだ」
スラリと抜いた剣を2人に向かって突きつける。
「さて、引いてもらおうか。出なければここら辺一帯が火の海と化す」
構えていた剣が炎に包まれた。その熱さにセンジュの額から汗が滲む。
ゆっくりとウリエルは階段を上がる。確実に一歩ずつ。
「ところで魔王は駆けつけない様だが、大事な1人娘を放って何をしている?」
ドクン
ウリエルの言葉に、アルヴァンは歯ぎしりした。
今にも怒り狂って襲い掛かりそうだ。
「貴様・・よくもあの方を・・許せん・・」
余裕そうにウリエルは辺りを見回す。
「四大魔将も1人居ない様だな」
それにはセンジュも不思議に思った。
あのフォルノスが駆けつけない。夜中でもしっかりと自分を見張ってくれていたフォルノスがだ。
不安が不安を増幅させる。
_フォルノスに何かあったの!?
「17年前に魔王に何をした!!」
「さあ?記憶にないな」
「とぼけるな!!」
魔王は今は床に臥せっている。
執務中に倒れ、現在はフォルノスが治癒の力を使って回復させている最中だった。
センジュはそれを知る由もないが2人には共有されている。
故に怒りが半端ではない。
「俺はこの子に用があるだけだ。酷い事はしないと約束しよう」
「信用出来るか!卑怯者!」
アルヴァンがそう言うと、流石にウリエルも怒りをあらわにした。
「卑怯?卑怯を生業としてきたお前達に俺が卑怯呼ばわりされる筋合いはないな」
その怒りは肩に乗るセンジュにもビリビリと伝わってきた。
怒りの声が体中に響いているのだ。
「卑怯で言うならば・・この子の母親を殺した魔王こそ・・真の卑怯者ではないか?」
ズキン
ウリエルの言葉がセンジュの全身に響いた。
_今・・なんて?
「魔王様に呪いをかけ、苦しめる者がそれを言うか!!」
アルヴァンの言葉もしっかりとセンジュに突き刺さる。
_どういう事・・?私の知らないところで・・一体何が起きてるの?
衝撃と不安の波がセンジュを襲った。
母の顔も父の顔も何度も脳裏に浮かびあがる。
「一体何が・・」
「それは天界で話す。行くぞ」
ウリエルは静かにそう告げると大きく翼を羽ばたかせ、一気に飛ぼうとした。
その瞬間だった。
ドシュッ!!!
ウリエルの脇腹に氷柱が刺さった。
「っ・・」
_これは・・フォルノスの!!
「許さん・・ウリエル!!」
目も止まらぬ速さでフォルノスの氷柱がウリエルの身体に突き刺さる。
天馬から飛び、ウリエルの近くに降り立った。
「うぬ・・流石だな・・」
しかしウリエルはそのまま飛び上がった。
「フォル・・!!」
「燃えぃ!!」
ウリエルはフォルノス目掛けて剣に纏った炎を放った。
「あああっ!!フォルノス!!いやああっ!!」
センジュの目の前でフォルノスが火だるまになった。
「ぐぅ・・センジュっ!待っていろ!!」
「こっちだ」
ウリエルは深手を負いながらもその隙を狙い、咄嗟に人間界の入り口へと飛び込んだ。


