バサッ！！
突然大きな羽音が聞こえたかと思うと、漆黒の羽が空から降ってきた。
「そこで止まれ」
ドキン
＿フォルノス！！見つかっちゃった！！
エレヴォスとセンジュの前に現れたのは、しかめた顔のフォルノスだった。
ギュッ
とセンジュの腕を掴むエレヴォスの手に力が入る。
その焦りを感じ、センジュが庇う様に一歩前へ出た。
「あ、あの・・これはね、これは私がいけないの」
その言い訳に
ギロリと鋭い目でセンジュを貫くフォルノスだ。
「ああ、いけないだろうな」
「ご、ごめん・・でも、私ママの事が知りたくて・・エレヴォスさんが協力してくれるって言うから」
エレヴォスはフォルノスを見つめ額から汗を流している。流石にマズい状況だと思っているのだろう。
「全く、余計な仕事を増やしてくれるな、お前は」
ズキン
「・・ごめん・・」
フォルノスの呆れた声が胸に突き刺さる。
「こちらにセンジュを渡してもらう」
「っ・・・」
フォルノスが手を差し伸べると、エレヴォスは一歩後ろへと引いた。
「エレヴォス・・さん？」
ゾクッ
思わず目を限界まで見開いた。
センジュはようやく異変に気がついた。エレヴォスは何故黙ったままなのか、何故後ずさるのか。
そして自分の犯した罪をようやく理解した。
＿ちゃんと考えれば良かった。もっとちゃんと見れば良かった。顔も声もそっくりだったけど、エレヴォスさんは絶対にこんな事しない。パパの命令に背くハズないのに。・・それに今日私が当たってしまった顎の部分に・・ほくろがない！！
強打した時、たまたま見つけた小さなほくろをセンジュは覚えていた。
確かにあの時はエレヴォスの顎の下には小さなほくろがあった。
それが決定的だった。
「エレヴォスさんじゃ・・ないの？」
ぼそりと思わず口走ってしまったのが良くなかった。
「ククク・・ハハハ・・ようやく気がついたのか。魔王の娘だというのでどれ程の者かと思いきや。本当にただの人間なんだな」
突然聞き覚えのない声に全身に鳥肌が立つ。
「だ・・れ？」
「ククク・・」
男はフォルノスを脅す様にセンジュの首を手で掴んだ。
「動くな・・動けばこいつの首が折れるぞ？フフフ・・俺はまだ諦めてないぜ」
「っ・・」
＿どうしよう・・どうしよう・・私のせいだ！！私の・・！！！
流石に簡単にはフォルノスも手が出せない状況だ。
「何故センジュを狙う？目的は」
「俺は命令に従うまで」
「という事は・・裏の手の者か」
「はあ？そんなものは知らんな。俺はその階段に用があるのよ。これを連れてな」
「・・・なるほどな」
センジュには理解出来なかったが、フォルノスは頷いている。
「つまり・・お前は天界の者というわけか」
「・・・。」
＿天界！？ってことは・・天使なのこの人！？
フォルノスの問いに男は答えなかった。相手が四大魔将だということは承知している様だ。額に汗が滲み出ている。
「無言という事は、答えという事だな。ならば容赦しない」
フォルノスが手をかざすと、何処からともなく部下達が現れ男を取り囲んだ。
「ち・・初めから気づいてやがったのか」
「当たり前だ。俺はネズミの走り回る音には敏感だからな。特にお前らの様な白いネズミはニオイでわかる」
＿フォルノスは初めから気がついてたの！？
涙を浮かべ自分を見つめるセンジュにフォルノスはため息をつく。
「説教は後だ。お前も泣きそうになってないで、抵抗のひとつでもしたらどうだ」
＿そんな事言ったって、掴まれてる手が強くて息も辛い・・。どうしよう。私に出来る事なんか。
考えた末センジュは男に問いかけた。
「どうして・・？天界の人が私を・・？」
「さあな。俺は頼まれただけだ」
「誰に・・」
「大天使ウリエル様にな」
「・・・ウリ・・エル？」
＿誰だろう？天使に知り合いなんている訳もないのに。
「俺は詳しくは聞かされていないがあの方がお前をご所望だ」
＿きっと私を囮に使う気なんだ。パパを陥れる為に。そんな事・・絶対させない！
センジュは目を閉じた。
「観念したか？一緒に来てもらう」
しかしセンジュは観念したわけではなかった。
集中したのだ。
エレヴォスに教えてもらった呼吸で。
「ふう～・・すう～～」
「？」
ただの人間だと思っていた男の油断が招いた。
「はあっ！！」
ドスッ
センジュは思いっきり肘でみぞおちを殴った。
「おごっ！て・・めえっ！！」
よろけた瞬間をフォルノスは見落とさなかった。
「伏せろ」
「！！」
よろめいた拍子にセンジュは地面へ倒れ頭を埋めた。
決着は一瞬でついた。
フォルノスは男の足に氷柱を放ち、部下達は一斉に捕縛にかかった。
「ぐあっ・・ああ！畜生！！この野郎！！」
ヒュッ
と鋭い音がしたかと思うと、センジュを庇ったフォルノスの脇腹に針の様な物が刺さった。
「フォルノス！？」
「騒ぐな。平気だ」
「それはどうかなぁ？それは天使の羽で出来た針だ。魔族にとっちゃ毒そのものだ。お前さえやっちまえば四大魔将は＿」
「黙れ！」
フォルノスの部下達に捕まった男は地に伏せながらも、してやったりと笑っている。
「そんな・・どうしたら」
センジュが慌てていると、フォルノスは刺さった針を自分で抜いた。
「俺がこんなものでやられるか。見くびるな。お前らそいつらを地下牢へ連れていけ」
「ははっ！」
部下達はすぐに男を連れて城へと向かって行った。
その姿が見えなくなった頃、フォルノスの体がよろめいた。
センジュはフォルノスを支えて近くの木の傍に腰を下ろした。
フォルノスの顔が青ざめている。汗も額から流れ落ちている。
「フォルノス・・」
「平気だ。大袈裟すぎる」
「嘘だ。顔青いし！絶対やせ我慢してる！」
「・・してない」
「してる！」
センジュはフォルノス手を握った。指先まで冷たくなっている。
「ごめん・・ごめんね」
「なんだそんなに誤って」
「だって・・私が間違わなければこんな事にならなかった」
＿どうしよう。フォルノスに苦しい思いをずっとさせてる。
「そうだな。お前が魔界に来なければこんな苦労はなかっただろうな」
ズキン
「うん・・そうだよね・・本当にごめん・・ごめんね」
泣きながら謝ると、フォルノスはセンジュの小さな手を握り返した。
「いつになく弱気だな。お前は間違ってない。何もな」
「そんな・・だって今回も」
「これは役目だ。お前を護ることはべリオルロス様から賜った俺達の使命だ。何も気負う事はない。今回の件もお前のせいではない」
その言葉に一気に涙が溢れ出た。
＿やっぱりフォルノスは陰で支えてくれてる。見ていてくれてたんだ。
「少し休めば毒も分解出来る。前にこれよりも強い毒を天使との争いで受けた事がある。安心しろ」
「ホント？」
「ああ・・だから無駄に泣くな」
「むう、無駄って・・ぐす・・」
ほっと一息安心したセンジュの涙を、フォルノスは指でぬぐった。
「泣き虫は一生変わらんのか？」
「ぐす・・変わらないと思う・・」
「フ・・そうか」
目を閉じながら、フォルノスは優しく笑った。
近くにフォルノスの愛馬が寄ってきた。
「ヒヒン・・」
「この子、心配してるみたいだよ」
「ああ、こいつはお前より頭がいいからな」
「な、何よそれ・・」
「ヒヒン」
まるで馬も頷いた様に返事をした。
センジュが気に入ったのか、顔を摺り寄せてきた。
「私じゃ城へ飛んでいけない・・よね？」
「1人で馬に乗った事はないんだろう？」
「ない、しかもこの子空を飛ぶよね？」
「ああ」
「う、うーん・・やっぱ無理かな」
と悩んでいると、馬が首をくいくいと動かし乗れと言わんばかりにアピールしてきた。
「ヒヒン」
「嘘・・乗れって言ってるかも」
「・・ク・・馬に指図されるとは」
「え、私やっぱり指図されたの！？」
「仕方ないな」
フォルノスはゆっくりと起き上がるとセンジュを抱え一気に馬の背中へと乗った。
センジュが先頭だ。
「手綱を」
「は、はい・・」
ドキドキドキドキ・・。
軽く手綱を動かすと、馬は真っすぐ駆けだした。そして空へと羽ばたいた。
「うわ・・こ、怖い・・けど動いてくれたよ！」
「だろうな・・はぁ・・」
「だ、大丈夫！？」
「ああ・・・」
フォルノスが息苦しそうなのを背中に感じ、センジュは使命感にかられた。
今にも気を失いそうな青白い顔をしたフォルノスを見て焦る。
＿フォルノスに助けられてばっかりじゃ駄目だ。私がなんとかしないと！！
「馬さん、お願いします。あのバルコニーまで連れていって」
「ヒン」
まるで『了解！』と言わんばかりに天馬は加速した。
「すぐに着くから・・頑張って！」
きゅっ。と後ろから抱きしめる手の弱弱しさを感じ、センジュは急いで馬を飛ばした。
突然大きな羽音が聞こえたかと思うと、漆黒の羽が空から降ってきた。
「そこで止まれ」
ドキン
＿フォルノス！！見つかっちゃった！！
エレヴォスとセンジュの前に現れたのは、しかめた顔のフォルノスだった。
ギュッ
とセンジュの腕を掴むエレヴォスの手に力が入る。
その焦りを感じ、センジュが庇う様に一歩前へ出た。
「あ、あの・・これはね、これは私がいけないの」
その言い訳に
ギロリと鋭い目でセンジュを貫くフォルノスだ。
「ああ、いけないだろうな」
「ご、ごめん・・でも、私ママの事が知りたくて・・エレヴォスさんが協力してくれるって言うから」
エレヴォスはフォルノスを見つめ額から汗を流している。流石にマズい状況だと思っているのだろう。
「全く、余計な仕事を増やしてくれるな、お前は」
ズキン
「・・ごめん・・」
フォルノスの呆れた声が胸に突き刺さる。
「こちらにセンジュを渡してもらう」
「っ・・・」
フォルノスが手を差し伸べると、エレヴォスは一歩後ろへと引いた。
「エレヴォス・・さん？」
ゾクッ
思わず目を限界まで見開いた。
センジュはようやく異変に気がついた。エレヴォスは何故黙ったままなのか、何故後ずさるのか。
そして自分の犯した罪をようやく理解した。
＿ちゃんと考えれば良かった。もっとちゃんと見れば良かった。顔も声もそっくりだったけど、エレヴォスさんは絶対にこんな事しない。パパの命令に背くハズないのに。・・それに今日私が当たってしまった顎の部分に・・ほくろがない！！
強打した時、たまたま見つけた小さなほくろをセンジュは覚えていた。
確かにあの時はエレヴォスの顎の下には小さなほくろがあった。
それが決定的だった。
「エレヴォスさんじゃ・・ないの？」
ぼそりと思わず口走ってしまったのが良くなかった。
「ククク・・ハハハ・・ようやく気がついたのか。魔王の娘だというのでどれ程の者かと思いきや。本当にただの人間なんだな」
突然聞き覚えのない声に全身に鳥肌が立つ。
「だ・・れ？」
「ククク・・」
男はフォルノスを脅す様にセンジュの首を手で掴んだ。
「動くな・・動けばこいつの首が折れるぞ？フフフ・・俺はまだ諦めてないぜ」
「っ・・」
＿どうしよう・・どうしよう・・私のせいだ！！私の・・！！！
流石に簡単にはフォルノスも手が出せない状況だ。
「何故センジュを狙う？目的は」
「俺は命令に従うまで」
「という事は・・裏の手の者か」
「はあ？そんなものは知らんな。俺はその階段に用があるのよ。これを連れてな」
「・・・なるほどな」
センジュには理解出来なかったが、フォルノスは頷いている。
「つまり・・お前は天界の者というわけか」
「・・・。」
＿天界！？ってことは・・天使なのこの人！？
フォルノスの問いに男は答えなかった。相手が四大魔将だということは承知している様だ。額に汗が滲み出ている。
「無言という事は、答えという事だな。ならば容赦しない」
フォルノスが手をかざすと、何処からともなく部下達が現れ男を取り囲んだ。
「ち・・初めから気づいてやがったのか」
「当たり前だ。俺はネズミの走り回る音には敏感だからな。特にお前らの様な白いネズミはニオイでわかる」
＿フォルノスは初めから気がついてたの！？
涙を浮かべ自分を見つめるセンジュにフォルノスはため息をつく。
「説教は後だ。お前も泣きそうになってないで、抵抗のひとつでもしたらどうだ」
＿そんな事言ったって、掴まれてる手が強くて息も辛い・・。どうしよう。私に出来る事なんか。
考えた末センジュは男に問いかけた。
「どうして・・？天界の人が私を・・？」
「さあな。俺は頼まれただけだ」
「誰に・・」
「大天使ウリエル様にな」
「・・・ウリ・・エル？」
＿誰だろう？天使に知り合いなんている訳もないのに。
「俺は詳しくは聞かされていないがあの方がお前をご所望だ」
＿きっと私を囮に使う気なんだ。パパを陥れる為に。そんな事・・絶対させない！
センジュは目を閉じた。
「観念したか？一緒に来てもらう」
しかしセンジュは観念したわけではなかった。
集中したのだ。
エレヴォスに教えてもらった呼吸で。
「ふう～・・すう～～」
「？」
ただの人間だと思っていた男の油断が招いた。
「はあっ！！」
ドスッ
センジュは思いっきり肘でみぞおちを殴った。
「おごっ！て・・めえっ！！」
よろけた瞬間をフォルノスは見落とさなかった。
「伏せろ」
「！！」
よろめいた拍子にセンジュは地面へ倒れ頭を埋めた。
決着は一瞬でついた。
フォルノスは男の足に氷柱を放ち、部下達は一斉に捕縛にかかった。
「ぐあっ・・ああ！畜生！！この野郎！！」
ヒュッ
と鋭い音がしたかと思うと、センジュを庇ったフォルノスの脇腹に針の様な物が刺さった。
「フォルノス！？」
「騒ぐな。平気だ」
「それはどうかなぁ？それは天使の羽で出来た針だ。魔族にとっちゃ毒そのものだ。お前さえやっちまえば四大魔将は＿」
「黙れ！」
フォルノスの部下達に捕まった男は地に伏せながらも、してやったりと笑っている。
「そんな・・どうしたら」
センジュが慌てていると、フォルノスは刺さった針を自分で抜いた。
「俺がこんなものでやられるか。見くびるな。お前らそいつらを地下牢へ連れていけ」
「ははっ！」
部下達はすぐに男を連れて城へと向かって行った。
その姿が見えなくなった頃、フォルノスの体がよろめいた。
センジュはフォルノスを支えて近くの木の傍に腰を下ろした。
フォルノスの顔が青ざめている。汗も額から流れ落ちている。
「フォルノス・・」
「平気だ。大袈裟すぎる」
「嘘だ。顔青いし！絶対やせ我慢してる！」
「・・してない」
「してる！」
センジュはフォルノス手を握った。指先まで冷たくなっている。
「ごめん・・ごめんね」
「なんだそんなに誤って」
「だって・・私が間違わなければこんな事にならなかった」
＿どうしよう。フォルノスに苦しい思いをずっとさせてる。
「そうだな。お前が魔界に来なければこんな苦労はなかっただろうな」
ズキン
「うん・・そうだよね・・本当にごめん・・ごめんね」
泣きながら謝ると、フォルノスはセンジュの小さな手を握り返した。
「いつになく弱気だな。お前は間違ってない。何もな」
「そんな・・だって今回も」
「これは役目だ。お前を護ることはべリオルロス様から賜った俺達の使命だ。何も気負う事はない。今回の件もお前のせいではない」
その言葉に一気に涙が溢れ出た。
＿やっぱりフォルノスは陰で支えてくれてる。見ていてくれてたんだ。
「少し休めば毒も分解出来る。前にこれよりも強い毒を天使との争いで受けた事がある。安心しろ」
「ホント？」
「ああ・・だから無駄に泣くな」
「むう、無駄って・・ぐす・・」
ほっと一息安心したセンジュの涙を、フォルノスは指でぬぐった。
「泣き虫は一生変わらんのか？」
「ぐす・・変わらないと思う・・」
「フ・・そうか」
目を閉じながら、フォルノスは優しく笑った。
近くにフォルノスの愛馬が寄ってきた。
「ヒヒン・・」
「この子、心配してるみたいだよ」
「ああ、こいつはお前より頭がいいからな」
「な、何よそれ・・」
「ヒヒン」
まるで馬も頷いた様に返事をした。
センジュが気に入ったのか、顔を摺り寄せてきた。
「私じゃ城へ飛んでいけない・・よね？」
「1人で馬に乗った事はないんだろう？」
「ない、しかもこの子空を飛ぶよね？」
「ああ」
「う、うーん・・やっぱ無理かな」
と悩んでいると、馬が首をくいくいと動かし乗れと言わんばかりにアピールしてきた。
「ヒヒン」
「嘘・・乗れって言ってるかも」
「・・ク・・馬に指図されるとは」
「え、私やっぱり指図されたの！？」
「仕方ないな」
フォルノスはゆっくりと起き上がるとセンジュを抱え一気に馬の背中へと乗った。
センジュが先頭だ。
「手綱を」
「は、はい・・」
ドキドキドキドキ・・。
軽く手綱を動かすと、馬は真っすぐ駆けだした。そして空へと羽ばたいた。
「うわ・・こ、怖い・・けど動いてくれたよ！」
「だろうな・・はぁ・・」
「だ、大丈夫！？」
「ああ・・・」
フォルノスが息苦しそうなのを背中に感じ、センジュは使命感にかられた。
今にも気を失いそうな青白い顔をしたフォルノスを見て焦る。
＿フォルノスに助けられてばっかりじゃ駄目だ。私がなんとかしないと！！
「馬さん、お願いします。あのバルコニーまで連れていって」
「ヒン」
まるで『了解！』と言わんばかりに天馬は加速した。
「すぐに着くから・・頑張って！」
きゅっ。と後ろから抱きしめる手の弱弱しさを感じ、センジュは急いで馬を飛ばした。
