「あ、そうだ。折角だからパパに聞きたい事があったんだ」

「改まってなんだい?」

コロッといつものパパに戻った魔王は近くに椅子に座った。
やっとハグから解放されたセンジュも隣の椅子に座る。


「あのね、4人の事・・パパはどういう風にみてるのかなって思って」

「どうしてそんな事が知りたいの?」

「魔王のパパが私に勧めてくるって事は、それなりに良い所があるからなんだよね?」


真相が知りたかった。そして4人の情報も。


「それなりにって、ちょっと気になる発言だけど。まあ、置いといて。そうだよ。あいつらは優秀だ。ちゃんと四大魔将としてカリスマ性も秘めているし。与えた領土もきちんと治めているしね」

「性格は?」

「私に忠実だし。とてもいいと思うよ」


_あ、そっか。パパは頂点に立つ人だから、そういう目線になっちゃうよね。フォルノスの裏の顔とか知らなそうだし。実は殺されかけたとか言ったら・・想像するのも恐ろしいな。


「じゃあ、もう一つ質問。パパはなんでママを好きになったの?」

「ぐいぐい来るねぇ。どうしたの?」

「だって、私だってちゃんとあの人達の事知りたいし。パパとママみたいに恋愛して結婚したいし」

「ふうむ・・」

「本当は決められた結婚なんてしたくないんだから」


魔王は自分の顎を撫でながら昔を思い出そうとしているらしい。
目が遠くを見つめている。
そして自分たちの思い出をよみがえらせた魔王はにまーっと幸せそうな顔をした。


「パパの一目ぼれだったんだよ」

「え!?」

「センジュが生まれる前に天使とのいざこざで、ちょっとやらかしてしまってね」

「え・・やらかすって何・・?」

「私としたことが天使たちに陥れられて地上に落とされてしまったんだ」

「そ、そうだったんだ」


_天使と戦ってたって事!?パパをって・・そんなに凄い人達なのかな。


「落ちた場所は人間界の飲み屋が立ち並ぶ商店街でね。朝方だったから人通りも少なくて。たまたま仕事帰りのママに見つけられたんだ」

「・・へえ」


魔王は思い出しながらうっとりしている。

「その時のママは本当に綺麗でね。何処か清楚で儚げでね。不思議な魅力を持っていた」

「そうなんだ・・」


自分の知らない母親の話を、センジュは食い入る様に聞き入った。
大好きだった母親の事だ。聞くだけで新鮮で楽しい。


「血まみれでゴミ置き場の上に落とされた私を、邪険にせず介抱してくれた。パパは命を救われたんだよ」

「血まみれって・・」


魔王はセンジュの頭を愛しそうに撫でる。


「ケガが治るまでの約束で家に入れてもらってね。でもさ、そんな事されたら惚れないわけないじゃないか」

「う、うん・・そうなの?」

「そうだ。見た目だって綺麗だったのに、優しくて素直で・・そんなアンジュをパパは大好きだったんだよね」

「・・パパ」


_ああ、そうだね。だって、私もママの事大好きだったもん。いつも優しくて・・頑張ってて


ポロ・・といつの間にかセンジュの瞳から涙が零れた。


「アンジュに逢いたいね」

「・・うん・・逢いたい」

「じゃあ、パパがなんとかしてみるから」

「え・・?」

「言っただろ?パパはちょっと頑張れば何でも出来ちゃうんだ。ママの魂を連れてくる事だって出来る」


それを聞きセンジュの脳裏に不安がよぎった。
急いで首を横に振る。


「駄目。だって、それってきっと危険な場所なんだよね」

「・・センジュ」


すぐに言葉で悟ったセンジュに魔王は感動している。


「パパまで失ったら・・本当に私生きて行けないから。だからいい。そんな事しないで」

「ああ・・センジュ!!なんて出来た子なんだお前は!!」


ぎゅうううっ!


「ふぐっ・・」


かくっ。
感極まった魔王のハグに、ついにセンジュは意識を失ってしまった。


「ああ、センジュ!ごめん~~~っ」