朝食を食べた後、呼ばれるまで部屋で待機していたセンジュの元にフォルノスの部下がやってきた。
見るからに焦った様子である。


_またギリギリになって、フォルノスが不機嫌になってるのかな?


と予想していたが予期せぬ事態だった。


「今日は訓練はなしになりました!」

「え・・どうしたんですか?お仕事でも・・?」

「それは・・その、お気になさらず・・本日は護衛担当が他の魔将様に代わる予定です。調整中ですのでしばしおまちくださ・・」

「だからどうしてですか??」

「ええと・・その・・」


部下は気まずそうだ。言いたくない様だった。
センジュは何故かその表情に嫌な予感がした。


「教えてください、あなたに迷惑はかけませんから。フォルノスに何か言われたら私から話します」

「しかし・・」

「お願いします」


部下は戸惑った様だったが意を決して頷いた。相手は魔界の王女だ。
とても真剣な顔をして見つめられその瞳を信頼し、折れたのだった。


「今朝、フォルノス様の朝食に毒が入れられておりました」

「え!?」

「今は医務室で休んでおられます。ですので本日の訓練は_」
「毒って・・毒殺!?なんで!?」


食い入るようにセンジュは詰め寄った。
理解出来ない出来事にセンジュの顔は強張る。


「お、王女様落ち着いてください」

「連れていってください!」

「しかし・・」

「お願いします。心配です!早く!!」

「う・・は、はい!ではこちらへ」


初めて見るセンジュの険しい表情に圧倒され、部下はセンジュを連れて医務室へと向かう。
センジュの心はもやがかかった様に不快感に襲われていた。


_あのフォルノスが狙われるなんて・・本当にここは危険な場所なんだ・・。


恐怖で震える腕を反対の腕で押さえながら医務室の扉を開けると、ベッドに青白い顔のフォルノスが横たわっていた。
思わずショックで口を手で覆った。


「フォルノス・・」

「これは王女様・・フォルノス様は今は薬で眠っておいでです」


フォルノスの様子を伺っていた城の医師が静かに言った。


「フォルノスは無事ですか?」

「ええ、幸い気づくのが早かったので。しかし猛毒を使われておりましたので・・回復に時間がかかると思います」

「そんな・・・猛毒って・・」

「フォルノス様は魔王様に次ぐ力をお持ちの方です。ゆっくりではありますがきっと無事です」

「・・はい」


_四大魔将って魔族の中でも凄く強いんだよね?そのフォルノスでさえもこんなになってしまうなんて。


立ち尽くしていると近くにいた侍女が椅子を用意してくれた。


「こちらへおかけください」

「あ、ありがとうございます」


そっと近くでフォルノスの顔を見ると肌がより青白く見える。
息も苦しそうにしている。


「フォルノス・・」


涙目になっているセンジュを見かね、医師は気を使ってくれた。


「私どもは隣の部屋で薬剤を調合しております。何かありましたらお呼びください」


「あ・・はい。わかりました」

「我々は外で警護しますね」

「ありがとう・・」


フォルノスの部下達も気を利かせ部屋から出ていってくれた。
しんと部屋は静まり返った。