廊下を歩きながらエレヴォスは城の中を案内した。
厨房や、武器庫、何かあった時の為の仕掛け扉などセンジュにとっては目新しい物ばかりがあった。
まるでレジャーランドのアトラクションのようだ。


「凄いですね、お城って」

「ええ、ですが、こう広いと慣れるまでは迷子になってしまいます。私も幼い頃は迷子になっていました」

「子供の頃からお城に来ていたんですか?」

「ええ、父が四大魔将の1人でしたから」

「凄い・・二世なんですね」

「ええ、そうなんです」


そんな他愛ない会話をしながら廊下を歩く。
1人では確実に迷子になるだろうと思えるほど城は広かった。
これといった目印はなく、同じ造りの廊下が続いている。
エレヴォスは廊下の途中にあった大きな扉を開けた。


「この外の階段を上っていけばあなたの部屋の階にも繋がっています」


時折風がふわりと吹き抜ける。
非常時などに使われる大きな螺旋階段。
エレヴォスにエスコートされゆっくりと登った。


「風で飛ばされたら大変ですね・・ここ」

「ええ、そんな日は使ってはいけませんよ。あなたは飛べないのですから」

「はい、絶対に避けます!」

「フフ。いいお返事ですね」


巨大な石垣でできているとはいえ、万が一足を踏み外したら命を落としかねない高さだった。
城の中へ入ると一安心した。


「この階は四大魔将に与えられた執務室がある階です。いつでも遊びに来てくださいね」

「はい・・ってお仕事されてるんですよね?遊びになんていけないですよ」

「何を言ってるんですか。あなたは特別ですよ、フフ」


いたずらそうにエレヴォスは口角を上げる。
楽しそうにずっと喋り続けるエレヴォスをセンジュは見つめた。


_あ、エレヴォスさんて・・綺麗で可愛い人かもしれない。


もともと整った顔立ちをしているが、表情が豊かになるとより魅力的だ。
あざといとも言えるその顔にセンジュは目を背けた。
急に異性として意識してしまった。


「どうしたんですか」

「あ、いえ・・なんでも」

「なんでもないのに目を背けるんですか?」


ドキンッ


のぞき込まれ、一気に顔の温度が上がった。


「顔が真っ赤ですね。熱は・・?」


額に額をつけられた。


「ひゃっ・・だ、大丈夫ですからっ」

「センジュ・・そんな顔しては駄目ですよ」

「え?・・んっ・・ふ・・」


唐突に頬を手で支えられ、顎を持ち上げられた。
長いまつげが近くに見える。
柔らかな唇の感触が残る。
唇を離されニコリと微笑まれる。


「急に欲しくなってしまいますからね」

「は、はい・・すみません」


_なんで謝ってるの私ーーっ!?突っぱねられないっ!!


エレヴォスの水の様に流れるペースにすっかり飲まれた後だった。