【宗】
「……ごめんなさい」
青山がいなくなった部屋で、美也子の妹が呟いた。俺も美也子も、無責任な許しを彼女にあげることはできなかった。
「……警察、どうする?」
「ううん、いい。あの人、ほとんど、何もしなかった」
「え、でも、あんた服ぐちゃぐちゃだよ、」
「これ、逃げようとしてなっただけなの。あの人、手首を押し付けただけだった。それ以外、本当に、何もしなかった」
俺もそれは、青山を止めようとしたときに思ったことだった。あいつは本当に、ただ美也子の妹手首を押さえつけていただけだった。
中学生の女が相手だったら、本気で犯そうと思えば、一瞬だ。
俺の助けなんて、絶対に間に合っていない。
だけど、だからといって、青山のしたことが許されるわけではない。あいつが圧倒的な力の差で、美也子の妹を怖がらせたことは確かだ。未遂だとかそんなことは、問題ではないと思った。
「許されないって、分かってる。最低なことをしたんだよ。何をしても償えない。誰かを殺しかけた。……一番大切にしていたものを失った。それで、やっと自分のしたことの最低さが分かった。でも、分かってほしい。私、平気で、生きて、ない」
「そんなこと分かってるよ」
「……どうすれば、いい?」
「自分で考えなさい」
「……うん。みやちゃん、ごめんなさい。巻き込んで、ごめん」
「嫌だよ。でも、これだけは覚えておいてほしい。私はあんたの味方だ」
美也子も妹も泣いている。
俺は、正直なところ、これが現実なのか悪い夢なのか、まだはっきりとは理解できていなかった。
青山のことを殴った拳だけが、今もひりひりと痛かった。目を覚ませ、と思った。青山があんなことをするなるなんて、誰が思っただろうか。
「俺、いったん自分の家帰るよ」
「……宗、巻き込んでごめんね」
「美也子は、何一つ謝ることなんてないだろ」
もう、俺はここにいないほうがいい。
美也子の妹と青山のことに関しては、姉妹二人で折り合いをつけるべきだと思った。
部屋を出る。その時、綺麗な包みが目に入る。
包装紙にはメリークリスマスの文字が並んでいた。