「いやー、むいてないなあ。むいてねえだろ、お前。面白い。人のサポートとかできるのか? コートの外じゃ、全く協調性がないからなあ、林は」


 遠慮のえの字もなく言い放たれた言葉に、放心してしまう。

今まさしく、その問題に直面しているところであったので、苦笑いを浮かべるしかなかった。


「高校の秋大会も近いんじゃないのか? なんで、こんなとこに来てるんだよ。あいつも、バスケまだやってるんだろ?」

 相沢先生は、完全に後輩の中に溶け込んでいる七海を指さして、首を傾げた。

それに頷いて、どう答えようか考えあぐねていると、ボールが足元に転がってきた。拾って顔を上げると、そこには、よく見知った懐かしい後輩がいた。


 責めるような顔はしていなかった。

ただ、少し戸惑ったような表情で私を見ていた。


「……夏、久しぶり。技ありのレイアップ、上手になったね」


 拾い上げたボールを渡す。そうしたら、彼女は嬉しそうに笑って、コートへと戻っていった。安堵する。その背中を見ていたら、温かいものが心の奥で少し滲んだ。


「七海に強引に連れてこられました」

「情熱を取り戻せってか?」

「うーん。取り戻すか取り戻さないか、決めろということなんだと思います。過去と向き合え、ということらしいです」


 そうなのだ。そのために今、私はここにいる。

相沢先生は私の言葉に、噴き出して、また豪快に笑った。