その時、部屋の扉がノックされる。ジュエルが「はい、どうされましたか?」と絵を描く手を止めて声をかけると、「失礼いたします」と言い大臣が入ってきた。

「どうかされましたか?」

大臣は基本的にはユーゴが仕事中はそばにいることが多く、ユーゴも今朝笑って仕事をするために自室から出て行った。こんなことは珍しい。

「それが、ユーゴ様の体調が急に悪くなってしまいまして……。熱もあるようなのでジュエル様に診ていただければと……。ユーゴ様も「ジュエルに診てもらいたい」と仰っていましたので」

大臣の言葉にジュエルは「わかりました」と真剣な表情を見せ、立ち上がる。そしてレンに「ここで待っていてね」と微笑むとユーゴのいる寝室へと向かった。

豪華なドレスの裾を持ち上げ、いけないことだとわかっていても走り出してしまう。それは村で多くの急患を診てきた医師だった頃の癖だ。

「ユーゴ様、診察に伺いました」

ジュエルが寝室のベッドに近づくと、「来てくれたんだ。嬉しい」とユーゴは顔を赤くしながら微笑む。その赤い顔が熱があってそうなのだとジュエルはすぐにわかった。