世界の西にある豊かな国、シャノン王国。美しい街並みを見下ろすように建てられたお城で、銀色の髪に紫の目をした美しい女性であるジュエル・ブルネッタは、息子のレンと絵を描いて遊んでいた。息子、と言ってもレンは黒髪黒目でジュエルと血がつながっていないことは一目でわかる。

ジュエルは医師として村でレンと暮らしていた。しかし、このお城に住む国王のユーゴ・アンガスに誘拐されてからはこのお城で生活している。

以前はレンにも会わせてもらえず、両手は常に手錠で拘束されていたが、今ではジュエルは自由に過ごしている。それはユーゴの愛情を受け入れようとしているからだろう。

「ママ、描けたよ」

「あら上手ね。綺麗なお花!」

ジュエルが褒めるとレンは嬉しそうに笑う。そして窓の外を指差して「お庭に生えていた花を描いたんだよ!」と言った。

「本当に上手よ!私は何を描こうかな〜」

レンと絵を描くジュエルを使用人たちは微笑ましく見つめている。レンと一緒にいられるようになったジュエルの顔には前よりも笑顔があった。