その日はお互いに連絡先を交換するだけで終わった。
 みさきは唐突なこの提案に悩まずにはいられなかった。
 しかし、みさきに悩むヒマはなかった。
 数日後、みさきが事務所へ行くと、すでに那智夫が手をまわしたらしく社長室に呼ばれ事務所移籍の説明がなされた。
 歌手になるか女優を続けるのかは、みさきの判断に任せる。ただ、みさきが女優の道を選択したとしてもアーク・ミュージックでマネジメントをおこない全面的にバックアップするというものだった。
 ここでゴネて皆に迷惑をかけるわけにもいかない。みさきには移籍の道しかなかった。