「あたし、女優だし歌なんて、、、」
「みさきには、きちんとボーカルトレーニングを受けてもらう」
「でも、、、」
 みさきは、いきなりの提案に躊躇(ちゅうちょ)した。
 でも、那智夫の目は真剣だった。
「みさき。君は女優といっても、今は所詮(しょせん)アイドルだ」
「アイドル?」
「そう。アイドルとは偶像という意味なんだ。いってみれば魂の入っていない仏像のようなものだ。でも、今、大衆が必要としているのはなんだと思う?」
「・・・」
「ひと言でいえば、それはカリスマ」
「カリスマ?」
「仏像でいえば、魂のこもった仏像。大衆を力強く引っぱっていける主導者のような存在が求められているんだ」
 那智夫の言葉にさらに力が入った。
「現代のカリスマをつくるには、みさきと僕が組むしかないんだ」