「みさきには信心はあるのか?」
「あたし!?」
 いきなりの問いかけに、みさきは戸惑った。
「ある」
 みさきには、この場では「ある」としか言えない気がした。
 那智夫は視線をいったんテーブルのコーヒーカップに移し、あらためて、みさきの目を見た。
「みさき! オレと組まないか?」
 那智夫は背広の内ポケットから名刺を取り出した。名刺には、
「アーク・ミュージックinc.
 専務取締役
 九鬼那智夫」
 と、書かれていた。