会長。私と恋のゲームをしてください。

「帰るぞ」



腕を引っ張られたと思った瞬間。

会長の手が、私の腕から離れる。

何が起こったのか、一瞬、分からなかった。



「いってぇ」



会長が理樹くんに突き飛ばされた。

地面に手をついている会長。

会長に駆け寄ろうとした私を制したのは理樹くんだった。



「春馬。美雪ちゃんの状況が分からないのか?」

「あ?」



会長が、制服についた砂を払いながら立ち上がる。


一触即発。


その言葉が私の頭に浮かんだ。

どちらかが、なにか言ったら、喧嘩になる。

私の直感が、そう言っている。



「春馬と一緒に居ることで、美雪ちゃんは酷い目にあっているんだぞ?」



そんなことない!


言葉にすればよかったのに、言葉にならなかった。

私が理樹くんの言葉を否定する前に、会長は理樹くんのシャツの胸元を掴んでいた。

今にも殴る勢いだ。


だけど、会長は殴らない。

こぶしを握り締めて、わなわなと震えていた。

そんな会長に対して、引き下がらない理樹くん。


理樹くんはズボンのポケットから携帯を取り出して、会長になにかを見せた。

目を見開く会長。


そこに、なにが写っているの?