会長。私と恋のゲームをしてください。

『えっ……』

『好きな人がいるのに、他の男の人と絡むのは嫌なの』



実る恋。

実らない恋。


どちらにしても、私は会長のことが好き。

だから、一途でいたい。

会長だけを見ていたいんだ。



『自分勝手な理由でごめんね』



ハルくんは何か言いかけて、やめた。

しばらくの沈黙が続いたあと、ハルくんは画面から消えた。



『応援しているよ』



その言葉を残して。


チクッと胸が痛くなった。

“ファイツ”始めた頃からずっと、ハルくんとパートナーを組んでいたのに。

それを、私の都合で終わらせるのは申し訳ないと思っている。

だけど、そうしないと、会長に私の思いは届くことはないと思ったから。

私は、今日でゲームを最後にする。


これは会長のためじゃない。

私なりの表現の仕方だ。


ピコン。

運営からメッセージが届く。



『ユーザーネーム、“ハル”とパートナーが解除されました』



ごめん。

心の中で謝ってから、私はゲーム機をシャットダウンした。



「ああっ! また、データ保存忘れた!」



だけど。

これから“ファイツ”をやることもないからなぁ、と思いながら、私はゲーム機を机の引き出しの中にしまった。