……俺に説教をされているみたいに聞こえるな。


俺じゃない誰かと話しているんだから、その人に言っているのだろうけど、妙にその言葉が刺さる。


「弱さを認めたら、次はその目に映る現実を見ろ。それすらも見ようとしない者には希望など見えない。立ち上がろうとしない者には誰も手は差し伸べない。だが……立ち上がろうとするなら私は手を差し伸べよう」


その言葉に、ゆっくりと身体を起こして。


二人の声がした方に顔を向けると……そこには、学ランを来た高校生と、高校生に手を差し出す母さんの姿があった。


この高校生……若いけど、高山真治か?


「いいんですか? 手を差し伸べる相手が俺で。立ち直る意味と、きっかけを失っているやつが他にいるのに」


チラリと俺の方を向いた高山真治。


「むう。なんだかこういうのは気恥ずかしいのだが。真治少年がそう言うなら」


そう言って、高山真治に伸ばしていた手を引っ込めて、俺の前に歩み寄った母さんは、優しく微笑んで手を差し出した。


「葵、おいで。大きくなったね」


「か、母……さん」


その手に触れると、母さんは優しく抱き締めてくれて。


俺の冷たい身体がじんわりと温かくなるのを感じた。