揺れる……揺れる。


黒く怪しく命が揺れる。


生きているかも死んでいるかもわからない、黒く沈んだ水の中にいるようで。


何も聞こえない、何も見えない。


俺の心は閉ざされたまま、ただ現実を否定し続けていた。


どこに行けば灯に会えるのか、死ねば会えるのなら死のうと何度も思ったけれど、その都度誰かに止められていた。


「今度こそ、葵はもうダメかもしれないな。それもこれも、全部俺達のせいかもしれないが」


「そんなのは誰にもわからなかったよ。それに、おかしいよ。誰かのせいだって言うなら、葵のせいでも結城さんのせいでもないでしょ。全部津堂が悪いのに……」


津堂……津堂。


灯を化け物に変えたやつだ。


だけど、その灯を殺したのは俺だ。


だから、俺が悪いんだ。


「あれから何日経った。名鳥さんもダメ、葵もこんなだ」


「宗司は蘭子ちゃんの支えが大きいね。というか、蘭子ちゃんがいないと不安定になるみたいだけど」


「葵こそ運命の少年かと思ったが……仕方ない。戦えなければバベルの塔に行くことなど不可能だ。酷なようだが、ここに置いて行くしかないな」


ふわふわと、水の中で聞いているかのように、声が歪んで聞こえていた。