「あ……灯……」


全ての感情を、そのたった一言に込めて、名鳥は葵の前に崩れ落ちた。


ガックリと項垂れて、言葉など出てこない様子で。


そして、グッと拳を握り締めて、葵の鼻っ柱に一撃を食らわせたのだ。


「お前が……お前が灯をこんな所に連れて来なければ……灯は! 灯は!」


二発、三発と、ボロボロと涙を流しながら殴り続ける名鳥を、慌てて止めに入ったのは昴と拓真。


「名鳥さん! それ以上はダメだ! 葵はあんたを助けに来たんだろ!? それ以上言っちまったら……」


「うるせぇよ拓真! こいつが灯を連れて来なけりゃ、灯は今頃家で明ちゃんと一緒にいたんだよ! 全部こいつのせいだろうが! お前なんか引き取らなければよかった! 何が息子だ! この疫病神が!」


拓真と昴の制止を振り切り、大きく振り被った一撃を再度葵の鼻っ柱に直撃させた。


レベルが半分になった名鳥の素手の攻撃。


それは、葵にはほとんどダメージがなかったが、灯を失って精神が壊れかけていた葵にとって、ダメ押しとなる一撃だった。


正気だったとは言い難い葵の心は、急速に壊れていってしまったのだ。





「灯……ずっと一緒だからね……」