灯は……俺が知っているだけでこれまでに二度、そして北軍で一度は化け物になっていると思う。


じゃあ、あと一回でも化け物になったら灯は……。


「それまでにお前を殺して、あの娘も助ける。少し難易度は高いが……やってみせるさ」


高山真治が日本刀を抜き、黒井を睨み付ける。


……情けない。


俺は、この重要な局面で、全く何の役にも立てずに吹雪さんに抱えられているだけなのか。


「わかった! 任せたよ真治! 絶対に負けるんじゃないよ!」


と、吹雪さんが言った次の瞬間。


俺の視界は真っ赤な液体で遮られた。


力なく吹雪さんの身体が崩れ落ちて、俺を抱くようにして屋上に倒れる。


「やれやれ。機密事項だと言ったはずだぞ黒井。強さに自信があるやつは口が軽くて困る」


この声……聞き間違えるはずがない。


「つ、津堂……」


吹雪さんの喉を掻き切った短刀を振り、立ち尽くす津堂の姿がそこにはあった。


いや、津堂だけではない。


「もしかしてこんな所まで俺達を追って来たのかな? ご苦労さん」


煌我がニッコリと笑って……そして、俺の顔面に向かってメリケンサックを装着した拳を振り下ろしたのだ。


パキッとという音が聞こえたのは覚えている。


だが、それ以降の記憶はプッツリと途絶えてしまった。


そんな中でも、微かに感じていたことはあったんだ。


この街は……どんどん破滅へと向かって行っているって。