「そうだ。その感じ方、間違ってはいない。東軍を支配する悪魔は、東軍の人間を人ならざる者へと変えたぞ。これは神への冒涜……本来あってはならない行為だ」
突如、俺と杏子の隣から聞こえた声に驚き、後方に飛び退いた。
そこにいたのは……ボサボサの長い髪に、みすぼらしいコートを着た髭ヅラのホームレスのような男。
北軍にナイトを放ったあの男だ!
「杏子さん離れて! そいつはポーンやナイトを召喚する人間の敵だ!」
俺がそう叫ぶと、杏子は奇妙な形の剣を両手に持ち、慌てて俺の隣まで後退した。
「その解釈は間違ってはいないが、正しくもない。俺は願いの力を引き出しているだけだ。人間は死に瀕する時、強く生きたいと願う。その命が散るとき、強い願いの力はバベルの塔に集まるのだ」
願いの力……そう聞いて、ふと脳裏を過ったものがある。
緑川が死ぬ時、光の粒が天高く昇って行くのを見た。
もしかしてあの光の粒は……この男が言う願いの力なのか?
いや、今はそんなことはどうでもいい。
「神谷! 灯を守ってくれ! こいつはここで倒す! じゃないと多くの人が死ぬ!」
さらに後退し、神谷に灯を預けて、俺は男に向けて日本刀を抜いた。



