東京ルミナスピラー

それに、もしも仮に灯だとしたら、どうして俺を見て逃げるんだよ。


どうして人間を食わなきゃならないんだよ。


俺が灯ではない理由を考えている間にも、夕蘭は部屋を見回して、何かを見付けてそれを拾い上げた。


「ほら、葵。あんたこれに見覚えあるんじゃないの? あんたの家族なら、いつも見てたんじゃないの?」


そう言って俺に差し出したのは……引き裂かれたブレザー。


その胸のワッペンは確かに俺が通っている学校の制服だ。


だけど、そんなものをいきなり見せられても、俺の頭の中は疑問だらけでなんと言って良いのかわからない。


「さっき、私が拐われた時、ここに連れてこられたって言ったよね? 灯もここに連れて来られたんだ。だから灯の制服があるんだよ」


「い、いや、だからって今の女を灯と結び付けるのは……偶然だろ。仮に灯だとして、じゃあどうしてこんな所に来なきゃならなかったんだ? 灯が南軍に来る理由がわからないだろ」


「それは……そうだけどさ」


この少ない情報の中で、いくら考えても答えなんて出ない。


あれやこれやと推測することはできても、答えなんて出ないのだ。


「今の女の捜索は、俺の仲間に頼むとしよう。この付近に潜む鬼の始末……という目的は果たせたわけだし、一旦ここを離れるか」