俺にとって、母さんは優しくて凜とした人という感じだ。


笑顔を作るのが苦手だけど、時々見せてくれたその顔は幸せになるような、そんな人だ。


「最高の母さんですよ。少し感情がわかりにくいところはありますけど」


「そっか。じゃあ、恵梨香の判断は間違ってなかったってわけだ」


そう言って、満面の笑みを浮かべるとビールをグイッと飲む。


「……あの、吹雪さんは結城さんをどう思いましたか? なんか言葉では伝えにくいんですけど……おかしくありませんでしたか?」


「世界はいつも動いてるんだ。葵が灯を探して北軍に来たみたいに、名鳥さんが暴走し続けたみたいに、南軍にだって何かしら起こってるってことだよ。まあ、それにしても結城は良い男だね。拓真と同い年とは思えないよ」


そう言われると、どこの軍にも問題は起こってるってことだよな。


俺だって、タケさんの代理で西軍を指揮している浜瀬さんに、裏切り者だと勘違いされているのだから。


「拓真がどうかしましたか? もうすぐ聖戦が終わりそうだから来てみたら、俺の話をしてたりします?」


そんな話をしていると、当の結城さんが隣のビルから飛び移ってやって来た。