屋上で結城さんに会って、俺達は聖戦が終わるまで待機することになった。


ずっと動きっぱなしで、疲れを少しでも取るためにという結城さんなりの気遣いなのはわかったけれど、本心は違うのだろう。


俺の日本刀が折れているのを見抜かれたから、聖戦が終わって武器が直るのを待ったに違いない。


近くのホテルの屋上。


暗くなり始めた空を見上げて、俺はぼんやりと母さんのことを考えていた。


俺を産んでくれた母さんではなく、育ててくれた母さんのことを。


父さんと姉さんを連れ帰ると言ってから、何日経ったのかわからない。


この間も、母さんは一人で不安と寂しさに押し潰されそうになりながら、夜を迎えているに違いないと思うと……胸が締め付けられる思いだ。


「こんなところにいたんだね葵。どうした? 何か考えごとかい?」


そんな俺に声を掛けたのは吹雪さん。


手には缶ビールを持って、南軍に入ったばかりだというのに少し酔っ払っているみたいだ。


「今頃母さん、俺達の帰りを待ってるのかなって考えたら、なんだか切なくなって。家族全員、この街に来ちゃいましたからね」


「明の方か……そっか。あの子は良い母親になれてるかい? まあ、葵少年を見てたらわかるけどさ」