俺達がそう言うと、千桜さんはフフッと微笑んで。


「キミ達のそういうところは、わたるくんとそっくりですよ。彼も『ヴァルハラ』では、運命に流されるままに武器を振るっていましたから。知らず知らずのうちに、何かに導かれて行くものです」


わたるくん……結城さんも俺達みたいに迷っていたということかな。


それでも、「ヴァルハラ」を終わらせたというのは、結城さんが本当に強かったからじゃないのか。


「深く考えなくていいよ。あんた達はあんた達なんだからさ。最初から『運命の少年』なんて期待してるわけじゃないよ。そういう運命のやつは……期待なんてしてなくても勝手に出てくるもんさ。それが良い意味でも悪い意味でもね」


そんなものなのかなと思いながら歩いた階段。


この場所は、南軍にとってはとても大切な場所なのはわかっている。


だけど、俺にとっても大事な場所。


姉さんが……死んだ場所だ。


夕陽に照らされて赤く輝く屋上。


その中に見える、ブルーシートの前で屈んでいる一人の男。


屋上に出た俺達に気付いたのか、その男が立ち上がって振り返った。


足元には、花が一輪、瓶の中に活けられていた。