「ああ、そうだ。灯ちゃんの居場所は知らないけど、北軍では今、おかしな噂が流れてるんだ。『篠田が死んだ』ってね。本当なの?」


善吉医院から去ろうとした俺達を引き止めるように、吹雪さんがそんなことを言い出したのだ。


恐らく北軍や南軍、そして鬼までが西軍で大暴れしているのに、タケさんが出てこないことでそんな噂が流れているのだろう。


「あのタケさんがまさかでしょ。それに、ランキングにもまだ名前が載ってるし。あれって、死んでも残ったままなんですか?」


でも、考えてみたら北軍の侵攻……主に父さんの暴走だけど、それは腑に落ちた感じがするな。


今までは、強引に攻め込んでもタケさんが強過ぎて、存在が抑止力になっていたんだ。


それが突然無くなったとしたら……結果が今に繋がっているのだ。


「わからないね。『バベル』では死んだら除外されたけど、この街はまた少し違うみたいだし」


「……そうですか。わかりました。何か情報が入ったら教えてくださいね」


「ああ、行っといで」


そうして吹雪さんに別れを告げて、俺達は上野駅の方に向かって歩き始めた。


カモフラージュ機能を使って、影を青くして。