父さんの車の助手席に乗り込み、シートベルトをしてスマホを取り出してSNSのチェックをする。


「ねえ、父さん。俺の本当の母さんのことを教えてよ。どんな人だったのか」


父さんはタバコを取り出して口にくわえると、それに火を点けて車を発進させた。


「んー? 恵梨香ちゃんか。とてつもなく美人で、自分がこうと決めたら曲げない強い子だったよ。何を考えてるかわかりやすかったし、少し不器用だったかな」


煙を吐き出し、フフッと笑って見せた父さん。


その表情で、良い関係を築けていたんだなというのがわかるよ。


でも、父さんは昔の話はあまりしない。


どうやって明母さんと知り合ったのか、いつから恵梨香母さんと知り合いだったのかと聞いても、はぐらかされて教えてくれない。


きっと、それは墓まで持って行くつもりなんだろうなと、なんとなく感じていた。


「ははっ。じゃあ俺が真面目なのは母さんゆずりってことか……ん?」


スマホを見ながらそう言った時、手の中でブルッと振動があった。


父さんのズボンのポケットに入っているスマホも何かを受信したようで、テロリンと音を立てる。


一体何を受信したのかと確認してみると、一通のメールだった。