「あの男はドコだ。忘れテいないゾ」


ポーンが言っているあの男とは、角を折った結城さんのことだろう。


「結城さんは南軍にいる。俺達とは一緒にいない」


「あの男を出セ」


ここにはいないと言っているのに、話が全く通じない。


「無駄なお喋りしてんじゃねぇ! 来るぞ構えろ!」


タケさんが言う通り、他のポーン達が動き出した。


いや、動き出したとかいうのんびりとした話じゃない。


俺が気付いたのは、鋭利な指で身体中を撫でられて、身体がバラバラになって崩れ落ちそうになっている時だった。


あの日の宗司のように、細切れにされる苦痛と恐怖を感じながら、意識まで切り刻まれている錯覚に陥って。


タケさんが声を上げているけど、何も聞こえない。


身体が崩れながら、ぼんやりとかすむ視界の中で、タケさんが戦っているのが何となくわかる。


そして、最後に見たものは。


大口を開けて俺を食おうとしているポーンの姿だった。


俺がどの時点でそうなっていたのかはわからない。


でも、確実にわかったのは、俺が死んでしまったということだけだった。


ポーンに食われる奇妙な感覚だけは味わっていた。