腕を広げ、それを振り上げるような動作をしたポーン。


その直後、俺達を取り囲むように五匹のポーンが地面から湧くように出現したのだ。


「マジか……俺は悪い夢でも見てんのか? どう見てもこれ、幻とか分身って感じじゃねぇぞ」


「ぜ、全部……本物ってことですか」


ポーン一匹でも厳しいってのに、全部で六匹。


遊鬼が可愛く見えるほどの強さに、この場を切り抜ける方法が思い浮かばない!


「うっすい望みに賭けて、あの一本角をぶっ殺してみっか?」


「それで他のやつらが消えれば良いんですけど、望み薄ですよね」


「んだな。でもよ、やってみねぇとわからねぇだろ!」


そう言うと同時に、力を溜めていたタケさんが最初からいたポーン目掛けて拳を突き付けた。


カラオケ店で見せた、光の拳!


凄まじい速度でそれがポーンに接近し、直撃すると同時に後方に弾き飛ばされる。


さすがにこれはダメージがあったかと期待したけれど……ポーンはクルリとバク転するように回転し、何事もなかったかのように着地して立ち上がった。


「おいおいおい、どんだけ頑丈なんだよ! ヤバいだろこれ!」


あのタケさんが焦りを見せている。


それほどどうしようもない状況というわけだ。