東京ルミナスピラー

朝になり、一応制服に着替えてリビングに入ると、母さんはうつらうつらと頭が前後に揺れていた。


ずっとテレビを見ながら、2人が帰って来るのを待っていたのだろう。


灯も俺に続いてリビングに入り、母さんの姿を見てため息をついた。


「お母さん、口には出さないけどかなり参ってるみたいね。私だって心配でろくに眠れなかったから眠くて眠くて……」


大きなあくびをしながら、灯が母さんに近付いて肩を揺すった。


「ひ、光? じゃ……ないわね。どうしたの灯。もう学校に行く時間でしょ?」


「どうしたのじゃないよお母さん。こんな調子でずっと寝ないつもりじゃないでしょうね? ほら、そんなんじゃ私達も心配で学校に行けないよ。お父さんとお姉ちゃんが帰って来たら起こしてあげるから、休んできなよ」


そういえば、いつもならテーブルの上に置いてある俺達の弁当箱が今日はないな。


それどころじゃない……というのはわかるし、それくらい母さんも動揺してるってことだ。


「そんなこと言って、学校を休みたいだけじゃないの? お母さんは大丈夫だから、早く学校に行きなさい」


「お弁当もないのに? それにさ、心配してるのはお母さんだけじゃないんだよ? 私も……葵だって、心配で学校どころじゃないんだから」


灯がそう言って俺も頷くと、母さんはやっとわかってくれたのか、小さく頷いた。