〜6年後〜


「ほら見てごらん。お花が綺麗ね」


「お花の上に、ちょうちょがいるよ」


小さな子供が花を指差して、手を繋ぐ母親に笑顔で話している。


小さな公園に散歩に来た親子、といった様子でとても微笑ましい光景だった。


そんな二人に、だらしなく服を着崩した男が、小さな子を抱えて近付いて来た。


「あ、そーしくん。あそぼあそぼ」


「あおいくんだ。おとーしゃん、おろして」


子供同士は友達なのか、駆け寄るなり満面の笑みを浮かべて。


そして二人で飛び回り、遊び始めたのだ。


「今日は神凪は一緒ではないのか? お前が息子を連れているとは珍しい」


「あー、なんだ。絶賛喧嘩中でよ。なんだってあいつはあんなに大雑把で自分勝手で、そのくせ何でもかんでも一人で抱え込もうとするかね。そんでもって、俺が手伝わないって文句を言うんだぜ」


「まあそう言うな秋本。お前はそんな神凪に惚れて結婚したのだろう? それくらいわかっていたはずだ。だから全てを愛してやれ。そんな人なんだとな」


女性がフフッと笑うと、秋本はため息をついて頭を搔いた。


本人は特にこのことを相談するつもりはなかったが、この女性にそう言われて少し、考えさせられたから。