「さて、昔話は良いだろう。葵は最後の審判に合格した。クイーンである私が認めたんだ。何を願う。この街で死んだ人間を生き返らせ、この街を元の世界に戻すことを願うか?」


最初はそのつもりだった。


いや、それしかないと信じてここまで走って来た。


明母さんとの約束もあるし、父さんと姉さんを連れて帰るなら、それが一番いいと思う。


だけど、この街で色々知ってしまった。


美空ちゃんや緑川、沼沢のように、病気や死が待っている人達もいるんだと。


全ての人を救うなんて、大層なことを言うつもりはないけど、それを知ってしまった俺は素直に願えない。


「願いは……決まってるんだよ実は。だけどさ、願いとは別に、少しだけ話を聞いてくれないかな。母さんに話したいことがいっぱいあるんだよ」


「偽物だというのに……まあいいだろう。それに、その程度の時間なら、未だ戦っているお前の仲間達も多めにみてくれるだろう」


俺がこうしている間も、まだ戦っている人達がいる。


それはわかっているけど、どうしても母さんと話がしたくて。


ほんの少しの時間だけど、親子の会話というものが出来たような気がした。