これが父さん……なんて、にわかには信じ難い。


さっきまでここにいて、俺と戦っていたというのに。


「話は大体聞いているだろう? お前の父、高山真治は、『ヴァルハラ』での街の主だった。そして黒井という男が、元の世界に戻ってPBTを落として来たことが、この街の始まりだったのだ」


「『ヴァルハラ』が終わって、元の世界に戻った黒井は、PBTを回収して津堂ともう一度、人為的にこの街を発現させる方法を探した……ってことだよね?」


津堂にも、何か事情があったようだけど、それでも父さんをこんな姿にしてまで成したいことがあったっていうのか。


「そうだ。PBTは何をしても反応することはなかったが、お前が産まれた日……奇しくも真治とPBTを持った黒井が再会し、PBTが反応したのだ。それ以来、黒井と津堂は真治を追うようになった。16年……逃げ続けるのは大変だっただろうに」


それでも最後は捕まって、そして母さんの死を知らされた。


その悲しみと絶望からこの街が発現してしまった……なんて、俺には全くわからない理屈だな。


だけど、本当にこんな街があるんじゃ、信じないわけにもいかない。


父さんの絶望から生まれた、悲しみの街。


それがこの街の正体だ。