東京ルミナスピラー

結局俺は父さんに置いて行かれて、肩を落として家の中に入った。


リビングに入ると、母さんと灯が食い入るようにテレビを見ていて、俺だけ戻って来たことに気付いたのか、母さんは不思議そうに首を傾げた。


「葵、お父さんは……」


「姉さんを迎えに行った。命を張るのは俺だけでいいってさ。なんだよ、格好つけちゃってさ」


父さんが俺を大切に育ててくれたのはわかってる。


だから俺は幸せだったし、何の不自由も感じることはなかった。


でも、姉さんを迎えに行きたいという俺の気持ちはわかってくれなかったと思ったら、少し悲しくなったのも事実だ。


「ねえ、葵。教えて。お父さんは本当に『命を張るのは俺だけでいい』って言ったのね?」


「う、うん。でもどういうことか俺にはわからなくて。そういえば、朝もおかしかったんだよ父さんは。俺のスマホに高山真治って人からメールがあったって言ったら、急ブレーキを踏んでさ」


俺がそう言うと、母さんの表情が変わった。


それは、朝に見た父さんの顔と同じもので。


そしてその直後、視線をテレビに向けたのも俺は見逃さなかった。


「まさか……そんな。高山真治……ですって?」