「さあね。あんなのは津堂が俺を動揺させる為についた嘘だって思いたいけど、本当のところはどうかわかんない。バベルの塔に行ってみるしかないんだよな」


「……なんか、お前は大人になったよな。あれだけ嫌ってた父親を、いつの間にか許してるんだもんな。お前に負けたくなくて、張り合ってた俺は子供のままだったってことか」


俺の隣でゴロンと横になり、星空を見上げて呟いた宗司。


大人になった……と言うより、あの人が俺達の為に逃げ続けていて、接触することさえ叶わなかっただけだったということを知ったから。


まるで氷が溶けるように、怒りがゆっくりとなくなって行く感じだったんだ。


「そうじゃないって、宗司もわかってるだろ? この街の人達がいたから、俺達はここまで強くなれたんだ。この街での経験が、俺達を強くしたんだよ」


「……なあ、考えたことはねぇか? あの日、俺達がこの街に来なければ、一体今頃何をしていたんだろうってさ。相変わらず俺とお前がバカやってて、灯に怒られてたのかもしれねぇよな」


そういう世界もまた、俺達が選択しなかった未来の一つなのだろう。


ただ、それを考えるのは、少し寂しく思えた。