東京ルミナスピラー

「ダメだ。お前は家に残って母さんと灯を守ってくれ。あの光は、とても安全だなんて言える場所じゃない。だからお前を連れていくことはできない」


どういうことだ?


父さんと母さんの様子がおかしかったのは、もしかしてあの光の正体が何かを知っているからなのか?


「いや、だって……あの光の中に姉さんがいるんだよ? 安全じゃないならなおさら、探す人は多い方がいいじゃないか!」


「だから俺が行くって言ってる! いいか、葵。もしもお前に万が一のことがあれば、俺は恵梨香ちゃんに会った時、なんて言えばいい?」


父さんの目から、とてつもなく強い力を感じる。


いつものほほんとしている父さんと同一人物とは思えないほどの、ハッキリとした意思。


「俺は……死んだ後、恵梨香ちゃんとお茶をする時にさ、お前の幸せな人生を話してやりたいわけよ。恵梨香ちゃんが俺に葵を託したのは間違いじゃなかったってさ」


そう言われると……俺は弱い。


玄関の横にたむけられた花を目を向けて。


それでも俺は、負けじと声を絞り出した。


「ずるいよ父さん。母さんの話を出すなんてさ」


「そう。俺はずるいんだよ。でも、わかってくれなくて構わない。光も灯も葵も、俺にとっては大切な子供達だ。だから、命を張るのは俺だけでいい」


そう言って、ポンッと俺の頭に手を置いて。


俺に背を向けると、父さんは車に乗り込んだ。