「おやおや、随分な大軍勢が攻めてきたもんだねぇ。こりゃあ私達も身の振り方を考えないと、無駄に殺されることになりかねないよ」


「はっ! だったらどうするってんだい? あの秋本とかいう強いやつだって手駒にないんだよ? もう私達みたいな『ちょっと強いだけの鬼』は、人間に屠られる存在になっちまったんだよ。せっかく秋本を食って力を付けたってのにさ」


まだ他軍に攻められていないビルの上で、ため息をつきながら地上を見ている二人の鬼がいた。


爛鬼と遊鬼。


かつては葵達を苦しめたが、今となっては葵達と力の差がつきすぎて、悲壮感さえ漂っていた。


「適当な人間をとっ捕まえて食うくらいはまだ出来るだろうけどね。どこでどう狂っちまったんだろうね。本当なら私達鬼が人間を壊滅させる予定だったんだろ? それがどうだい。人間に追いやられてここに身を寄せる始末さ」


「元はと言えば、あんたがあんなガキに殺られたのがケチのつき始めなのさ。絶鬼だって調子に乗ってやられっちまうし。私達の時代じゃないってことかね」


どこか人間臭い二人の会話は、誰にも聞かれることがないとわかっているからだろうか。


死に場所さえ見付けられず、生きる場所さえない。


会話からはそんな悲しみが聞いて取れた。