東京ルミナスピラー

「あ、ああ……葵……宗司……」


大きなお腹で苦しそうに、目を見開いて俺と宗司を見る蘭子。


捨てられて、自らの手で殺した憎い相手を前にしても、蘭子は荒い呼吸の中で微笑んだ。


「葵……宗司……ごめん。蘭子が勝手なことをしたから……蘭子のせいだね……」


そしてその言葉を聞いて、宗司が頭を抱えてその場に蹲った。


この状況でこの言葉は……俺でも辛いのだから、宗司にとってはたまらないだろうな。


「何言ってんだよ。友達だろ? 蘭子がピンチの時にはいつでも駆け付けてやるさ。だから気にすることなんてないさ」


そう言いながら宗司を軽く蹴って合図をするけど、さすがに厳しいか。


「宗司……宗司、顔を見せて……」


苦しそうに蘭子が声を発して、それに反応するように宗司が顔を上げた。


「あ……あ……蘭子……俺、なんて言ったら良いか……」


「何も言わなくても……良いよ。蘭子を助けに来てくれたんだよね。ごめんね」


何となくだけど……俺はこの時にはもう、感じ取っていたのかもしれない。


この状況が一体何を意味しているのかということを。


どうして蘭子が一度も「ありがとう」と言わないのかということを。