「あ、ちょっと葵くん! 一人で行かないでよ! 僕も行く!」


ビルの上を飛んでスカイツリーに向かう俺を、美空ちゃんはまるで空を飛ぶように追い掛けて来た。


超能力って便利だな……なんでもありかよ。


「危なくなったら逃げろよ! あの声は……本当にヤバいかもしれないって俺も思えてならないからさ!」


街灯が街の輪郭をぼんやりと浮かび上がらせる闇の中、両国へと向かう線路の上に飛び乗って、ひたすら走った。


その途中で、まだ響いているあの声は何なのかというのが気になったであろう人達が、俺と同じように線路の上に飛び乗って来たのだ。


「誰かと思えば……名鳥とこのお坊ちゃんか。お前もあの声が気になったのか?」


俺と併走するは、ハルベルトを持った宗司の親父さん。


「親父さん。ええ。日が変わったら来るかもしれない東軍の侵攻に備えてたらいきなり大絶叫ですからね。こんなに離れてるのに聞こえるなんてただ事じゃない」


「ほう? 日の変わり目を警戒していたとは、凡愚と思っていたが、思ったよりはマシのようだな」


と、親父さんが軽く俺をdisったところでまた新たな影が二つ。


俺と親父さんと挟み込むように線路の上に飛び乗って来たのだ。