「ところで葵くん。蘭子ちゃんのことやけどな」


宗司に捨てられ、強い絶望の中で悪魔へと変貌してしまった蘭子。


人と関わりを持たせることで、絶望を味わうことが出来ると黒井が考えていたのなら、それは大成功だよ。


「もしも敵として現れたら、戦うつもりか?」


「俺は……蘭子とは戦いたくありません。だって悲しいじゃないですか。心底好きだった人に捨てられて、父親の思惑通りになってしまって。その絶望を照らす希望に、俺はなれなかった。でも、友達なんです。友達は助けたい。おかしいですか? 友達の宗司とは戦っておいて」


「ああ、おかしいのう。おかしいけどワシは好きやでそういうの。葵くんがどんな想いで、誰と戦おうとワシは構わん。誰に何と言われようと、自分の行動は自分が認めてやれよ。せやなかったら、苦しむことになってしまうからな」


もしも俺と蘭子が戦場で出会って、説得するも戦うも、俺の心ひとつってわけだ。


当たり前のことかもしれないけど、それを改めて示してくれるのは心が軽くなった気がする。


どんな行動を取っても、後悔のないように選択をしなければ。


その覚悟があるかないかでは、遭遇した時にすぐに動けるかどうかに差が生じるから。