「なら、今すぐ西軍を潰してもいいんだぜ秋本。勘違いするなよ? 魔刻を待ってるんじゃねぇ。テメェらに足掻く時間をやろうって言ってんだよこっちは。テメェらがかき集めた戦力を、全部まとめて喰らい尽くしてやる!」


そう言って蘭子を連れ、穴から外に飛び出して行った黒井。


それをただ黙って見ていることしか出来なくて、強くなったと思い込んでいた自分の弱さに心底呆れ果ててしまう。


「ぷはぁっ! な、何じゃい! 今のは! あまりの恐ろしさに息をするのも忘れとった。あれが黒井……あんなのと戦わなあかんのか!? 勝てるわけがない!」


振り返ってみると、大和さんも夕蘭も顔を真っ青にしてガタガタと震えている。


姿形が恐ろしいから……というわけではなく、黒井から放たれる負のオーラに圧されたという感じか。


俺も親父さんも、一歩も動けなかったんだから、無理もないか。


「しかし……どうするつもりだ? 聖戦が終わるまでと言ってもそれほど時間はない。黒井のことだ。慌てるお前達を見て、絶望に打ちひしがれるお前達を見て楽しむ腹積もりだろうが、篠田を欠いてなお、立ち向かう勇気はあるか?」