「拓真。泣いているのか?」


門を出ると、壁に持たれていた舞桜が声を掛けた。


心配して見に来ていたのだろうか。


「なんだよ舞桜。お前ずっとそこにいたのかよ。ざまぁねぇよな。守らなきゃならなかった女一人、守れずに見殺しにするしかなかったんだぜ」


「拓真のせいじゃない。悪いやつは他にいる。だから落ち込まないで」


こういう時、慰めようと、励まそうと声を掛ける人がいるけど、その言葉は考えさせることになって余計に悲しくなるんだ。


「うるせぇよ馬鹿。んなことわかってるし、励ますなら杉村を励ましてやれ。あいつ、催眠状態だったとはいえ、夢子が他の男とセックスしてたのが相当堪えたみたいだからよ」


俺が是松も戦っている最中に、どうやら夢子を発見してしまったらしく、泣きながらこの場から立ち去ったらしい。


流石に吹雪さんも、何のフォローも出来なかったと言っていた。


「私は……いつもの嫌いな拓真でいてほしい。大丈夫、私は死なないから悲しませない」


「ハッ! なんだよそりゃあ。でもまあ、死なねぇってのはありがたいよな」


それだけ言うと、拓真は再び歩き出した。


何かを決意したように。